恨み辛みの果て

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ああ…体全身痛い…



「ひっ…えぐっ…せんぱ、雅先輩っ…」
「……泣くな平太…俺は大丈夫だから…」



全身打撲。
医務室に運ばれた俺の診断は、それだった。満足に動かせるのは、首と右手だけ。だから、平太の涙を拭って頭を撫でるのも一苦労。

こんな大怪我をしたのは、遡ること1時間ま…半刻前のことだ。























――――――…



「雅先輩……」
「お、おお平太。日陰ぼっこか?」
「はぃ…楽しいですよぉ…」



日陰ぼっこが楽しいかどうかは別として。俺は平太の隣に座った。……確かにほどよい涼しさ。



「先輩…また怪我してます…」
「え?ああこれか……大した傷じゃないよ」
「……富松先輩…が…いつも心配そうに見てますよ…」
「!」



平太は、ぴったりと俺にくっついて俯いた。余談だが、平太は上手くくっつく…というか、ピッタリフィットする奴だ。コンパクトサイズだし。

と、それは置いといて。



「作兵衛が?」
「はぃ…雅先輩の修行を見に行くと…いつも木の影から見ていますよぉ…」
「そ、そうだったのか。ありがとう、教えてくれて」



平太の頭を撫でた。平太は気持ち良さそうにすり寄って、…超かわええマジ拐いた…ゲフンゲフン…

と、とにかく、作兵衛や他の人も安心出来るように強くならないとな。



「平太」
「なんですかぁ…?」
「俺、頑張るからな」
「…無理はしないで下さい…」
「うん。…さてと、平太はこれから委員会だな。用具倉庫まで一緒に行こうか」



俺の言葉に、平太は嬉しそうに笑って手を繋いできた。その可愛い行動に顔が緩む。もうだるんだるんに緩んでる。



「じゃ、用具倉庫に…………………?」
「…?どうしたんですかぁ…?雅先輩…」



微かな違和感に、足を止めた。



「っ平太伏せろ!!」
「ぷぎっ」



ここで、意識は途切れた。























――――――…



「ったく…」
「…そんな怒らないで下さいよ。誰も砲弾が木に当たって、折れた木が俺を直撃するなんて予測できないんだから」
「それに怒ってんじゃない!しばらく曲者が表れなかったから、護衛をつけなかったが…やはり狙ってきやがった」



とめ先輩は、拳を床に叩きつけた。平太がびびるので止めろと言いたいが、まじで体痛い。よく死ななかったな俺。



「作兵衛が血相変えて来たもんだから、本当にびっくりしたんだからな」
「作が?」
「たまたま通りかかったらしい。まあ、あの道は三年長屋から倉庫までの近道だしな」
「へぇ…」



作兵衛が、知らせてくれたのか。
タイミング良く来てくれたおかげで、俺も平太も助かった。あとでお礼言いに行かないとな。…あ、でもまだあの時のこと引きずってるかもしれん。



「雅先輩…」
「平太、もう泣くな。雅もこうして助かったんだから」
「……でも…」
「平太、俺は本当に大丈夫だよ」



可愛い後輩を守れただけで満足ですよマジで。火縄の匂いをよく嗅ぎ当てたと思う。これも修行の賜物だ。



「全治1週間といったところだね。ちゃんと、ここで大人しくしておくこと!」
「へーい」
「雅はじっとしてらんねぇからな。大人しくしとかないと、簀巻きにされるぞ」



冗談を言って笑う。
こんな当たり前なことが、こんなにも幸せになるんだ…
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