恨み辛みの果て

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「これ以上雅を傷付ける前に退け。以前のように、ひたむきに雅を愛し続けられないのだから」



立花先輩は、そんな事を言って去っていった。強く拳を握って、発狂してしまいたくなる衝動を抑えた。


“傷付ける”

その言葉が酷くのし掛かって、息苦しい。



「作兵衛、」
「っ!ぁ…先輩…」



声をかけられ、振り返った。そこにはやっぱり雅先輩がいる。

我ながらバカなことをした。

先輩が嫌いだと言い逃げしたのは俺だ。それなのに、立花先輩がべたべた触れてるのを見たら、嫉妬でどうしようもなくなったんだ。



「ありがとう」
「ぇ…?」
「いやぁ、あの人の行動は突拍子もないからね。作兵衛が来てくれて良かったよ。…あと、この前のこと。木が倒れてきた時、作兵衛が助けを呼んできてくれたんだろ?本当に感謝してるよ」
「あ、いや…そのっ…あれはっ…」



何で。何で笑う。何で俺に微笑んでくれる。愛しくて堪らないその笑顔を見ると、胸が張り裂けそうなんだ。



「最近、体調崩してないか?」
「……はい…」
「そっか。それは良かった!」
「っ…」



前と変わらない笑顔。
そうだ。俺はあの時、この人を信じた時、絶対に諦めねぇと決めたじゃねぇか。雅先輩はいつも変わらない笑顔で接してくれてんのに、俺は変わっちまった。

愛して欲しいから愛してるんじゃねぇ。ずっとそう考えていた。否、そう言い聞かせてじっと耐えていた。だが今はどうだ。愛して欲しい。愛してくれないなら愛せない。見返りを求め、不満ばかりを漏らしやがる。

こんなんだから、立花先輩に負けるんだ。



「先輩、俺…」
「ん?」
「俺、やっぱり先輩のことが好きです」
「…作兵衛、それは…」
「昔の先輩も、今の先輩も、大好きです。愛してます」



今と昔、どっちが好きかなんて、考えられねぇ。だって、どっちも先輩だ。俺が愛して止まない大切な人じゃねぇか。



「俺は、今の先輩を通して昔の先輩を想ったりなんかしてないです…」
「…」



どんなに苦し紛れに嫌いだなんて言っても、結局俺は先輩が好きで好きで仕方がないんだ。誰よりも、愛している。



「ずっと、」



目の前にいる雅先輩が、崩れ落ちた―――――
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