恨み辛みの果て
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「安心しろ」
「ッ!?」
潮江先輩は、俺の隣に座って腕を組んだ。指1本動かすことすらできないくらい体が強張る。
それを見透かした潮江先輩が、鼻で笑った。
「別に、お前から雅を取り上げたりはしない。だから、これは没収だ」
「あっ…」
潮江先輩は、俺の懐から例の毒を抜き取ってしまった。
それは、最後の毒。
三年生と謂えども所詮は低学年だ。忍務なんてのは、学園長のお使い程度。そんな俺が手に入れる毒薬の数なんざたかが知れてる。
「お前は、雅を殺さなかったのではなく、殺せなかったんだ。手に入れた毒の量も少ないし、何より愛する者を殺す勇気が無かったからだろう」
「お、れは…っ」
「仙蔵に何を言われたか知らんが、いちいち気にするからおかしな行動をとるんだ」
何も知らないくせに…
わかりきったようなことを言う潮江先輩に若干苛立ちながら、目を逸らした。
俺が真っ正面から立花先輩と競ったって、負けるに決まってんだ。雅先輩より小さくて、弱くて、何もできねぇ俺なんか……
「仙蔵にも言っておくが、忍者の三禁を忘れるな。恋情に溺れれば、お前は忍者への道を失うことになる」
そう言って去っていく潮江先輩の後ろ姿を見送った。
忍者の三禁…?
そんなのが何だってんだよ。忍者だって、いつかは所帯を持つんだ。それは、恋情あってこそだろ。
「雅!いつまで寝てんだバカタレ!」
「ふげぁッ!?も、もんじ先輩!もっと優しく起こして下さいよッ!!」
俺は、再び修行を開始した2人をただ眺めるしかなかった。
―潮江先輩にならまだしも、雅先輩にまでバレていた。やっぱり、知識だけの暗殺はできねぇってことか…