恨み辛みの果て
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どうも。雅です。
毎日勉強鍛練の繰り返しでだいぶ疲れてます。
最近では立花先輩にいろんな罠にかけられ、身を以て罠の種類や見分け方を学んだところです。
「……」
そのおかげでほら。
黙ってでも罠を避けられるようになりましたよ。
え?何で敬語かって?
気分。
「あ、雅先輩なんだなぁ」
「おー四郎兵衛!相変わらず可愛いな!」
「ふわぁっ」
いやもう、ほんと可愛い。
四郎兵衛のぼへーって感じがもう癒しすぎる。毎日罠に掛けられて荒んでいく俺の心を癒してくれる子だ。
わちゃわちゃと抱き締めて、柔らかさを堪能した。
「そういや、四郎兵衛は何でここに?」
「ボク達、体育委員会総出で三年ろ組の次屋三之助先輩を探しているんですー」
「……ああ、なるほど」
昨日も作兵衛が血眼になって探してたなぁ…
「じゃ、俺も協力するよ」
「本当ですかぁ?」
「ここらへんは立花先輩が俺用に張った罠がたくさんあるしな。危険だからいっしょに行こうな」
「はい!」
四郎兵衛と手を繋いで、竹林の中を歩いていく。四郎兵衛の手はほんとにやわっこいし温いしもう可愛すぎる!!
「あれ?」
「どうした?」
「あれ、次屋先輩じゃないですか?」
四郎兵衛の指差す先にあるのは、それはもう大層なカラクリだった。なんとまあよくぞここまで大きなカラクリを……
で、そのカラクリに引っ掛かってたのが三之助なんだけどさ。
「あれ?雅先輩と四郎兵衛!」
「三之助、凄いことになってるね」
逆さまに吊るされた三之助は簀巻き状態になって、ブランブランしてるのだ。
「雅先輩を探しにきたらこんなんなっちゃって」
「頭に血昇らない?」
「昇ってます」
でしょうね。
とりあえずクナイで縄を切って、三之助を救出した。この大層なカラクリをいつの間に作ったんだか……
立花先輩って暇人なのか。
「そういや、何で俺を探してたんだ?」
「二年生が、雅先輩を罠に嵌めようとしてたからです」
「あーそっかそっかー。…………ん?」
「……」
二年生と言われて、繋がれた手の先を見る。
目のあった四郎兵衛は変な汗をかきまくると、ふいっと目をそらした。
……なるほどなるほど。
「四郎兵衛?」
「ぼっぼくは知らないんだなぁ!」
……すっかり騙された。
つまりこのカラクリは二年生が作ったもの。
二年生総出で俺をコレの餌食にしようとした訳だ。四郎兵衛に俺をここまで連れてきて、油断させたところをコレで……
「クソッ…あの無自覚方向音痴バカのせいで!」
「なんで見張ってなかったんだよ左近!」
「仕方ないだろ!いきなり走ってきたんだから!」
まあ二年生だしね。
三年生の、しかも体育委員で鍛えられてる三之助に敵うわけないわな。かく言う俺もついこの間、三之助と腕相撲して一瞬で負けたしな。はははは。
……って笑い事じゃねぇわコレ。2こ下の後輩に負けるって……
「三之助は俺に警告しに来て罠にはまった。四郎兵衛は体育委員会総出の三之助捜索と偽って俺を罠にはめようとした。結果失敗したわけだな」
「別に失敗したわけじゃねーし!」
「三郎次、これは明らかに失敗なんだなぁ」
可愛い可愛い二年生が俺を罠にはめようと……
なんて悲しい。けど可愛い!
「三之助は何で罠のこと知ってたんだ?」
「勘です」
「勘?」
「嘘です。四郎兵衛が最近こそこそしてて、こないだ偶然見かけたときに話してて」
「なるほどなるほど」
後をつけれるわけないもんな。三之助は左門同様、標的が目の前にあっても逆方向に行っちゃうような子だし。
「ん?じゃあ何で二年生は俺を罠にはめようとしたんだ?」
「それは…」
四郎兵衛が目をうるうるさせて見てきた。
え、ちょ、何?可愛いんですけど拐うぞ。
「雅先輩、最近は忙しそうでぼくたちに構ってる時間がないんだなぁ…。だから、立花先輩みたいに罠を作って、雅先輩を驚かせたかったんです」
「おい四郎兵衛!」
「何言ってんだよ!!」
「え?だってみんなも寂しいって」
「あーっ!あーっ!」
いや。なんかもうね……
「素直じゃないんだからなぁもう!」
「うわ!?」
「みんなわちゃわちゃしてやるからこっち来い!」
「離せよ!」
「可愛いぞお前らー」
ツンデレ二年生、ご馳走さまでした。