恨み辛みの果て
□17
2ページ/2ページ
「ほう、二年生がな」
「結局失敗してましたけどねー」
立花先輩が罠を回収し終えて戻ってきたから、さっきあったことを話してみた。そしたら何時もの維持悪い笑顔になった。
その顔結構怖いんですよ。
「それにしても、罠まで見抜けるようになるとは。やはり飲み込みが早い」
「え、立花先輩が俺を誉めるなんて……明日は焙烙火矢の雨が降るのかな…」
「ははは、面白い冗談だ。殺すぞ」
「……」
……今の聞いた?
笑顔のち真顔で「殺すぞ」だって!
可愛い後輩に殺すぞはないだろー
「……そういやお前、未来に帰るのは諦めたそうだな」
「え?」
「お前を見張っていた竹谷からの情報だ。あれから作兵衛も正常に戻ってきていると聞いたが」
「あー……まあそうですねぇ。なんか俺がいないと時間進まないらしいんで」
我ながら早い決断だと思う。
もし今、元の世界とこの世界どっちか選べって言われたら、この世界を取る。だって、少しずつでも記憶が戻りつつあるんだし。
居心地の悪い平成よりも、ここにいた方が充実している。
「作兵衛の言ったこと、信じているのか」
「え?まあ、はい」
「……非現実だとは思わなかったか」
「非現実も何も、別の世界に来ちゃう時点で非現実じゃないですか」
「…………ふっ……そうだな。雅はやはり雅だな」
全てが非現実過ぎだった。
俺がこの世界に来たのも。天女がこの世界に来て、チートな能力発揮してたのも。この世界の時が1年も止まっていたのも。
非現実な現実がそこら中に転がっているような現状において、「そんなことはあり得ない」なんてことが有り得ないんだから。
「俺、この世界で精一杯往きますよ。もう、やり残して死んだりしないよう、強くなります」
「やり残し、」
「飲み込み早いってのも、ある意味チートですよね。でも、チートだろうと何だろうと利用してやりますよ。そして、大切なものを守ります」
“雅”はやり残して死んだ。
―学園を、みんなを、元通りにしてみせる―
―守ってみせるさ、虎若も作兵衛も、どんなに憎い野郎でも。命あってこその未来だから―
“雅”の決意。
―お主なら、学園を元に戻せるやもしれんな―
学園長の言葉。
もう中途半端で死んだりしない。
「……良い目をしてる」
「?」
「お前はいつも、どこまでも真っ直ぐだ。正直じゃなくて、強がってばかりで、それなのに無駄に真っ直ぐだ。……まあ、それがお前の魅力でもあるのだが」
立花先輩が、俺の頭を撫でた。
「………………おかえり、雅」
やっと、心の底から“雅”を受け入れた声だった。
正直じゃないのはどっちだよ。
ずーっと、俺のこと微妙に天女扱いしてたくせに。
でも、やっぱ認めて貰えるのは嬉しい。
「……ただいま戻りましたよ、立花先輩」
「ふん、遅すぎだ」
「最短ですぅ!遅くなんかありませんし!」
少しずつ、元通りになっていく。