恨み辛みの果て

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「ほう、二年生がな」
「結局失敗してましたけどねー」



立花先輩が罠を回収し終えて戻ってきたから、さっきあったことを話してみた。そしたら何時もの維持悪い笑顔になった。

その顔結構怖いんですよ。



「それにしても、罠まで見抜けるようになるとは。やはり飲み込みが早い」
「え、立花先輩が俺を誉めるなんて……明日は焙烙火矢の雨が降るのかな…」
「ははは、面白い冗談だ。殺すぞ」
「……」



……今の聞いた?
笑顔のち真顔で「殺すぞ」だって!
可愛い後輩に殺すぞはないだろー



「……そういやお前、未来に帰るのは諦めたそうだな」
「え?」
「お前を見張っていた竹谷からの情報だ。あれから作兵衛も正常に戻ってきていると聞いたが」
「あー……まあそうですねぇ。なんか俺がいないと時間進まないらしいんで」



我ながら早い決断だと思う。
もし今、元の世界とこの世界どっちか選べって言われたら、この世界を取る。だって、少しずつでも記憶が戻りつつあるんだし。

居心地の悪い平成よりも、ここにいた方が充実している。



「作兵衛の言ったこと、信じているのか」
「え?まあ、はい」
「……非現実だとは思わなかったか」
「非現実も何も、別の世界に来ちゃう時点で非現実じゃないですか」
「…………ふっ……そうだな。雅はやはり雅だな」



全てが非現実過ぎだった。

俺がこの世界に来たのも。天女がこの世界に来て、チートな能力発揮してたのも。この世界の時が1年も止まっていたのも。

非現実な現実がそこら中に転がっているような現状において、「そんなことはあり得ない」なんてことが有り得ないんだから。



「俺、この世界で精一杯往きますよ。もう、やり残して死んだりしないよう、強くなります」
「やり残し、」
「飲み込み早いってのも、ある意味チートですよね。でも、チートだろうと何だろうと利用してやりますよ。そして、大切なものを守ります」


“雅”はやり残して死んだ。




―学園を、みんなを、元通りにしてみせる―



―守ってみせるさ、虎若も作兵衛も、どんなに憎い野郎でも。命あってこその未来だから―



“雅”の決意。




―お主なら、学園を元に戻せるやもしれんな―



学園長の言葉。



もう中途半端で死んだりしない。




「……良い目をしてる」
「?」
「お前はいつも、どこまでも真っ直ぐだ。正直じゃなくて、強がってばかりで、それなのに無駄に真っ直ぐだ。……まあ、それがお前の魅力でもあるのだが」



立花先輩が、俺の頭を撫でた。



「………………おかえり、雅」



やっと、心の底から“雅”を受け入れた声だった。

正直じゃないのはどっちだよ。
ずーっと、俺のこと微妙に天女扱いしてたくせに。

でも、やっぱ認めて貰えるのは嬉しい。



「……ただいま戻りましたよ、立花先輩」
「ふん、遅すぎだ」
「最短ですぅ!遅くなんかありませんし!」



少しずつ、元通りになっていく。
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