泡沫ノ恋

□second.
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「体育は全クラス合同なんだね」
「まあ、クラスごとの人数が少ないからね。ほら、並ぶわよ」



照代ちゃんに手を引かれて、私は列に並んだ。体育は前の学校でもまあまあできてたし、みんなの足を引っ張らずには済むかな!























――――――…



「体育は全クラス合同なんだね」
「まあ、クラスごとの人数が少ないからね。ほら、並ぶわよ」



居た。明るく透き通った声も、あの時のまま。ああ、ああなんて、愛しい。早く、早く話したい。久しぶりって、また、“作、大好き”って言ってくれ。



「雅っ…」
「作兵衛、ストップ」
「っ!孫兵、…なんだよ」



孫兵は、俺の真横に立った。そして、そっと、俺にしか聞こえないような小さな声で、呟いた。



「雅、覚えてないよ」
「っ、あ?」
「僕たちのことも、あの時代のことも。それを踏まえて話しかけなきゃ、引かれるんじゃないか」



覚えて、ない…?
なあ嘘だろ?嘘だ。だって、あんなに愛しあってたんだ。来世でも一緒にって、約束…っ



「覚えていないということは、逆に良いことだよ」
「藤内…どういうことだ」
「雅があの時代でどれだけ苦しんでいたか、忘れたのか?」
「ああ、なるほど。そういう考え方もあるね」



確かに、あの時、雅はずっと苦しんでいた。俺達のことを思い出すってことは、あの時の記憶も一緒に思い出すってことだ。あの苦しみを、雅が受け止められるとは思えない。



「こらー、そこの3人早く並べー!」



体育教師の声が無駄に広い体育館によく響いた。急いで自分の位置に行こうとした時、こっちを向いた雅と目があった。



「雅、前向いてなさい。あの教師、怒らせると怖いんだから」
「あ、うん。ねえ照代ちゃん、この学校は男の子が多いね」



優しい声が、耳を刺激する。それだけで、愛しさが溢れだしそうになるんだ。でも、今は抑えねぇと。

雅、愛してるぜ。
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