泡沫ノ恋

□second.
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――――――…



「無事に放課後を迎えた雅ちゃん参上!」
「もう、普通に来なさいよ。先生との話は終わったの?」
「うんっ帰ろー」



と言っても、照代ちゃんの家と私の家は全く正反対。一緒に帰れるのは、校門前までなんだけどね。



「なんか不安だなぁ…」
「えー、何がー?」
「あんたのことよ。転校初日から伊賀崎孫兵に目をつけられるなんて…」
「つけられてないって!照代ちゃんがそう言ったのに…」
「…うん、そうよ。そうよね。でも、十二分に気を付けるのよ?なんなら家庭科室から包丁持って来て護身用に…」
「しないから!」



そんな話をしている間に、校門に着いてしまった。別れを惜しみながら手を振ると、“永遠の別れじゃないんだから”と笑われてしまった。



照代ちゃんと別れて、家のすぐ近くの公園に近づいた時だった。公園の敷地を囲む塀に寄りかかる男の子がいた。

あの時、体育の時に怒鳴られてた人だ。赤茶色の髪の毛と、鋭い目付きが印象的だった。ちょっとカッコいいとか思ってたりしたりする。



「よォ」
「…」



どうしよう、これ私に話しかけてるのかな。私じゃありませんようにでも周りに人いねぇぇえ…



「な、なん、でしょう、か…?」
「…本当に、覚えてねぇんだな」
「へっ?」



うわぁあああどうしよう近づいてくるぅぅうう照代ちゃん助けて!!

男の子は、スッと手を上げた。思わずギュッと目を瞑った。

殴られるッ…!?



「…」



…あ、あれ?

いつまで経っても衝撃と痛みは来ない。それどころか、温かい手が右の頬に触れた。そしてそのまま引き寄せら…れ…ぇ?



「〜〜〜〜〜〜ッッッ!?!?!?」



いいいいい今のって…キ、キ、キスされっ…うわぁあああ!!!!!!



「なななな何をッ!?」
「覚えてなかろうと、おめぇは俺のだ」
「はいッ!?んっ…!?」



後頭部に回された手に力が入り、更に深く唇が触れた。ていうか舌入れられた。人生初のキスが知らない人となんて…しかも1分足らずで再び奪われるなんて…!

ていうか人来ちゃうよ!ここが外だと言うことを忘れないでぇぇえ!!



「ふぁっ…んぅっ…」
「ん…」




苦しい苦しい苦しいッッ
もうだめ!!

必死に押し返そうとするものの、力が強くてできない。



「何やってんだバカァァアアア!!!!!」
「ごぶぁッ!?」
「ひぇえっ」



ズシャアッと激しく男の子が倒れ、その上に薄紫の髪をした男の子が乗っかっていた。その男の子は、慌てて立ち上がって私の肩を掴んだ。



「君っ大丈夫だった!?」
「大丈夫…じゃないです…!」
「ああああそうだよね大丈夫じゃないよね!!本当にごめん!!」



いったい何なんだこの人達は!

私は何が何だかわからず、ビクビクと震えていた。



「あの変態にはボクがよく言い聞かせるから!!」
「て、ていうかあなた達誰なんですか!?」
「あっ…ごめん…僕は三反田数馬です…その…数馬って呼んでね」
「は、はあ…」



助けてくれた救世主…もとい数馬くんは、まだ申し訳無さそうに眉を下げて言った。



「あの馬鹿は富松作兵衛。あいつのことは無視していいから!」
「おい数馬。俺に向かって随分な口きいてくれんじゃねぇか」
「か、数馬…くん…」
「あっあの数馬でいいよ!」
「あ、うん…数馬、私…帰っていいかな…」
「うんうん!………………え?」
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