泡沫ノ恋

□forth.
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温かい。まだ、生きてる。



「雅…どうしたら良かったんだ…?ただ、愛してるだけなのに…おめぇは俺が嫌いになっちまったのか…?もう、一緒にはいれねぇのか…?」



両手で雅の手を包み、頬を寄せる。熱のせいもあって、雅の手は熱いくらい温かかった。

雅が目を覚ましたら、この手を放そう。俺のせいで苦しませるくらいなら、俺は身を引く。

数馬にも、そう言われた。今は離れろと。ゆっくり、少しずつ関係を築けばいいと。



「なあ雅、今解放したら、おめぇは俺にチャンスをくれるか…?」



また、愛するチャンスを…――























――――――…



「え…帰っていいの…?」
「……ああ…」



私が目を覚ましたのは、夜が明けてからだった。体に気だるさは残っているものの、なんとか動ける。

そして、ずっと私の手を握っていたらしい富松くんは、突然“帰ってもいい”と言い出した。



「昨日みたいに…苦しませたくねぇ…から…っ」



俯いてしまった富松くんの表情はわからないけれど、きっと泣いているんだと思う。だって、こんなにも声と手が震えているから。私の手を握る富松くんの手は、緩んだり力が入ったりの繰り返し。頑張って手を放そうとしているけれど、意に反して力が入ってしまっているようだ。



「わ…悪ぃ…決めたのにな…っ手を…放すって…」
「富松くん…」
「でも、やっぱり怖ぇんだよ…誰にも盗られたくねぇっ…愛してんだよっ…愛しくて愛しくてっ…抑えきれなくなっちまう…!」



ポタポタと、涙が落ちて富松くんの服に染みができた。こんなに、私のことを愛してくれている。けど、どうして私なのか、それがわからないよ。



「雅っ目が覚めたのね!」
「て、照代ちゃん…」
「ああ良かった…!さあ帰るわよ!」
「あっ…」



飛び込んできた照代ちゃんに腕を引かれ、立ち上がらせられた。富松くんの手がすんなり放れてしまったことに驚き、振り返る。富松くんは、俯いたまま動かない。ただ、膝の上で拳を震わせ、耐えている。



「雅、行くわよ」
「照代ちゃんっ…ま、待って…!」



私は、見てしまった。
涙で濡れた顔を上げ、私を呼び止めようとする富松くんを。

どうして、そんな顔をするの…?
私は、富松くんとどんな関係だったの…?



「…っ…“作”…!」



どうして、私は今さら彼を呼ぶの…?
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