泡沫ノ恋

□forth.
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「うっ…ぐ…雅っ…」



ついに、放してしまった。これで雅が苦しむことはない。だが、俺はもう、アイツの傍にはいれない。

雅、会いてぇよ。今離れたばかりなのに、もう雅を求めていやがる。



「作兵衛…」
「っ数馬…なあ、本当に良かったのか…?これでアイツを手に入れられるのかっ…?」
「うん。僕達を信じて……。必ず、雅を取り戻してみせるから」



思い出さなくていい。
苦しんだ記憶も、幸せだった記憶も、忘れたままでいいんだ。ただ、今から俺を愛してくれるのなら…























――――――…



「はー…」



自宅のベッドに倒れ込み、仰向けになってお気に入りの抱き枕を強く抱き締めた。昨日嫁いでいったかのように家を離れた娘が次の日に帰ってきて、両親は本当に驚いていた。



「富松くん…泣いてたなぁ…」



何だろう…ズキズキする…
ま、まさか恋に落ちてしまっ……いやないな。確かに最初は、富松くんのことカッコいいとか思ってたけど、あんな…ヤクザだなんて…知らなかったからだし…



「作…か…」



やっぱり覚えてないなー。
幼稚園の時、咲ちゃんはいたけど。あれは女の子だし、まったく似てない。



「前世で恋人だったりして…」



なんて有り得ないことを言って、1人笑う。前世の記憶を持ってる人って確かにいるらしいけど、だいたいは小さい頃に忘れてしまうって言うし。



「雅、何してるんだ。そろそろ出ないと遅刻するぞ」
「疲れた。今日はもうむり」
「そうよ、あなた。雅は今朝帰ってきたんだから、今日はゆっくりさせてあげなきゃ…」



お母さんが説得してくれたおかげで、お父さんは大人しく部屋から出ていってくれた。お母さんは、少し心配そうな顔をしていたけど、何も言わずに出ていった。



「私…やっぱり富松くんのこと…好きなのかな…いやでも…会って初日でキスしてくるような人が好きって…私どんだけ…?照代ちゃんに言ったらドン引きされる…友達止められるぅぅう…」



じたばたもがいたのは良いけど、何も解決しない。頭の中では、富松くんが必死に私の手を握って泣く姿がフラッシュバックしてる。



「私…どうしたらいいんだろ…」



熱が出たから体は気だるいし、考えることに疲れてしまった。もう、寝てしまおう…
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