泡沫ノ恋

□fifth.
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富松くんとお友達になろう計画を立ててから、早くも2週間が経った。2週間…2週間も会ってない。
いや、1週間は富松くんお休みだったから仕方ないとして、もう1週間は乙だった。

クラスが違うためなかなか会えない。唯一の合同体育では、時間ギリギリに来て終わったら即帰ってしまうため話しかけられない。

…私…避けられてる…?



「あ、」



上靴からローファーに履き替えようと下駄箱を開けた。そこには私のローファーと、見知らぬ手紙が入っている。それを取り出し、宛先と差出人を確認した。間違って違う人の下駄箱に入れた可能性がある。ていうか1回あった。あの時は机の中だったけど、取り出したら“美香ちゃんへ”って。誰やねん“美香ちゃん”



「お待たせーっ…あら?なぁに、ラブレター?」
「それなのかなぁ…一応“天津さんへ”って書いてあるよ」
「開いてみなさいよ!」
「う、うん…」



カサカサと紙が音をたてて開かれていく。中には至ってシンプルだ。ていうかこれルーズリーフだ。
大きなルーズリーフの中心に小さく、“放課後 生物準備室へ来てください”とだけ書かれていた。



「放課後って、今日の放課後?」
「そうじゃない?行ってきなさいよ!待ってるから」
「えー、でもさぁ…」
「ほら、いいから行くっ」



照代ちゃんに背中を押され、私は渋々生物準備室へ向かった。























――――――…



「あっ…来てくれたんだね!」
「は、はあ…あの…私に何か…?」



生物準備室にいたのは、人当たりの良さそうな男の子だった。この時点でわかっているのは、彼がクラスメイトではないということ。同じクラスだったら顔くらい覚えてるよ。名前はわかんないけど…



「あ、あの、僕…初めて君を見た時から好きでした!僕と付き合って下さい!」



ぉおう…なんとまぁ勢いのよろしいことで…

顔を真っ赤にして一世一代の告白を成し遂げたかのように私を見てくる。どうしよう照代ちゃん助けて。



「えっと…気持ちは嬉しいよ…でも…」



違う。
どうしてだろう。これこそが正当な告白…しいては青春だというのに。

人に好きだと言われれば、多少なりにトキメクものではないのかな…

富松くんに言われた時は、すごくドキドキしてた。…え、なに私って…強引なのが好きなの…?乱暴なのがお好きとかそういう系だったわけ?

ないないない。きっとイケメンだからだよ。富松くん目付き怖いけど、イケメンだもん。うん、そうだ。そうに決まってる!



「天津さん…?」
「あっ…ごめんなさい…あのね、私…気になる人がいるというかなんというか…えーいやいないよ!いないいない!そうじゃなくて、ちょっと心に引っ掛かる…あああ違くてぇぇぇ」
「他に、好きな人がいるんだね」
「いやいや好きとかそういうのではなく…と、とにかく、私はあなたの気持ちには答えられない…かな…」



私がまごまごしながら答えると、男の子は少し悲しそうに笑って「そっか…」と呟いた。



「じゃあ、お友達になってくれる?」
「え、あ、はい。それなら…」
「ありがとう。はい、これ僕のメアド」
「?」
「友達なんだから、メアド交換しなきゃ」



あれ、なんか…雰囲気が違う…?



「赤外線通信でやろう」
「へ、あ…はい」



なんか、あれよあれよという間に私達はメアドの交換をして別れた。

なんだろう、ゾワゾワした。
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