泡沫ノ恋

□seventh.
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「えーっ休みぃ!?」
『…ごめん、完全なる風邪でした…』
「風邪ってあんた……はぁ…今日1日ゆっくり休んで、しっかり風邪治しなさいよ」
『うん、ごめんね…』
「いいから。おやすみ」
『おやすみ…』



携帯を閉じて、ため息をついた。
昨日から具合悪そうにしてたけど、まさか風邪だなんて…
昨日は富松あんちくしょうの車で送ってもらったらしいから、何かあったのかと心配したわ。ていうか、昨日は何で富松あんちくしょうが雅の荷物を取りに来たのかしら…



「おっ北石!何で1人なんだ?」
「げっ神崎…」
「雅は?」
「い、伊賀崎…あんた達には関係ないでしょ!」
「雅は風邪で休みだ」
「とっ富松!雅に何かしたんじゃないでしょーね!」



憎い。
何で雅はこんなのと友達になんてなりたいのかしら。私はこいつの顔見ただけで…いや、名前を聞いただけでイラッとするわ!



「何もしねぇよ」
「ていうかっ何で雅が風邪だって知ってんのよ!」
「メール来たから」



メール…だと…!?
い、いつの間にメールなんて…
まままままさか脅して奪い取った…!?



「雅から申し出たんだよ」
「えぇ!?」
「昨日のメールの返信はヤバかったな!」
「雅は相変わらず可愛い奴だよ。まあジュンコには敵わないけど」
「作兵衛なんて悶えすぎて過呼吸になりかけてたもんな!」
「……うるせぇ」



ほ、本気だったのね…
富松あんちくしょうと友達になるって、本当に友達になっちゃったのね!



「今日は会えると思ったのになぁ」
「仕方ないよ、風邪なんだから」
「おい、早く教室行かねぇと遅刻だぞ」



雅…
あんたの決断力…というか思考回路に私の脳はぶっとびそうよ。

風邪が治ったら覚悟しなさい。きっちり問い詰めてやるんだから…






















――――――…



「えっ…雅ちゃんが風邪…!?」
「ああ!作兵衛にメールが来たんだ」
「何でそれを早く言わないんだよ!雅ちゃんは、今家に1人…
(マズいよこれはマズい!今日は遊佐も休みだったよね!?)」
「…
(遊佐のことだから、絶対に雅が休みだということは嗅ぎ付けてるだろうな…どうする、作兵衛に話すか)」
「(ダメだよ…今話したら計画がぶち壊しだ…)
作兵衛、雅ちゃんにメールしてあげなよ」
「あ?なんて…」



雅ちゃんのお父さんは今日も仕事だ。それに、お母さんも既に海外に行ってしまっている。

家に1人は本気で危ない。



「戸締まりはしっかりしとくように…とか。具合が悪い時って、誰かからメールとか来たら嬉しいだろ?」
「俺からのメールでもか…」
「作兵衛からのだからこそ嬉しいんじゃないか!
(いいから早く送って!)」



作兵衛は、少し照れながら携帯を開いた。ぽちぽちとボタンを押す横で、文面を覗く。

内容は、具合はどうか、とか気遣うものから始まっている。うん、うまいよ。それから、1人でいるならちゃんと戸締まりをするようにと、注意を促すもので終わっていた。

たった1日で成長したね!



「送信…」
「それで、休み時間毎に連絡してあげるんだ」
「しつこい奴だと思われねぇか?」
「それだけ気を遣える人間だって印象付けなきゃ。ただでさえ最初がアレだったんだから」
「おう…」



後は、待機させてる部下に、雅ちゃんの家に向かわせよう。近所に怪しまれてはいけないから、身を潜ませて…



「数馬、そろそろ教室に行こう」
「あ、うん!作兵衛、ちゃんとメール送るんだぞ!」
「ああ」
「さあ、行こうかジュンコ…」
「教室はあっちだー!」
「こっちだろ」
「どっちも違ぇ!」



焦りは禁物だ。
少しずつ、少しずつ、信頼を取り戻すんだよ、作兵衛。
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