泡沫ノ恋

□eighth.
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「却下!!!!!!!」



お昼時の教室に、北石の声が響いた。クラスの奴らは何事かとこっちを振り向いて、また視線を反らした。そしてまたこっちを見ては反らす。

そうやって目を反らすのは、作兵衛率いる極道な奴ら(俺ら)がいるからだろうけど…



「僕達は雅に言ってるんだぞ!」
「あんたは黙ってなさい神崎!雅を強姦しかけた富松こんちくしょうにこの子は渡しません!」
「照代ちゃん!?」



強姦とかしかけてな………しかけたか。いやでも、そういうこと大声で言ったら雅可哀想。めっちゃ顔真っ赤だから。



「雅ちゃん、ダメかな?」
「数馬…わ、私はいいけど…照代ちゃんが…」
「雅まじ可愛い。前も可愛かったけど、なんかすげー女子力高くね?作兵衛に上目遣いやってみ」
「へ?次屋くんなに?富松くんがどうしたの?」
「っ!!!!??」



俺に言われたこと素直にやっちゃうとか、ほんと天然。雅はちっちゃいから、見上げるだけでもう上目遣いだよ。作兵衛とかヤバイくらい真っ赤だ。赤いペンキ塗りたくったみてぇ。



「作兵衛、勃っちゃったな」
「うううううるせぇぇぇッッ!!!!」
「?(立った…?)」
「お前ら本当に黙れよ!話が進まないだろ!」



数馬が声を張り上げ、雅の手を握った。…それはマズイんじゃね。作兵衛めっちゃ睨んでる。嫉妬の炎メラメラしてる。おー怖い。



「雅ちゃんさえ良ければ、僕達はもっと仲良くなりたいんだ」
「数馬…」
「ダメよダメダメ!」
「照代ちゃん、」
「兎を飢えた肉食獣の洞穴に放り込むようなもんなのよ!?」
「酷いな、肉食獣だなんて。それは作兵衛だけだろ」
「あんだと孫兵…てめぇ何が言いてぇんだよ」



あの2人はほっといて、数馬と藤内は北石の説得に取りかかった。雅の保護者気取りでいる北石は、ラスボス並のしぶとさがある。



「北石さんも、一緒に食べようよ」
「雅が心配なら、隣に座ればいいだろ。反対側は数馬に座らせるから」
「大勢で食べた方が美味しいよ、きっと」
「………………………はぁっ………もう、わかったわよ」
「やった!じゃあ、明日昼休みになったら屋上に来てね」



数馬が言い終わったところで、ちょうどよくチャイムが鳴った。俺らはそれぞれの教室に戻って、次のかったるい授業を受けに行った。

そういえば、教室から出るときにすっごい視線を感じた。興味半分ビビり半分な視線じゃなく、射殺すような鋭い視線。それと殺気。

たぶん雅を覗く全員が気がついただろうな。

カワイソーな雅。あんな男に好かれちゃって…
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