泡沫ノ恋

□nineth
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ついに、朝を迎えてしまった。
教室に向かう足取りが重い…

2年生の教室は2階にあって、階段を上らなきゃいけない。



「あっああああ雅!」
「照代ちゃん、どうしたの?そんなに慌てて…」



教室のドアに手をかけたところで、照代ちゃんが慌てて近寄ってきた。あまりの慌てように、周りがチラチラと見てくる。

まるで…何か隠してるみたい…



「私が教室に入るから、良いよって言ってから入ってきてっ」
「えー?私、今日日直だもん。早く荷物置かなきゃ」
「ちょ、まっ」



私は、後悔した。

黒板にはたくさんの落書き。…ううん、あれは落書きじゃない。私のアドレスと、携帯の電話番号だ。

“私を慰めて”

そう書かれている。



「…」
「さ、さっきね…着いたらすぐに三反田に呼ばれて…3組に行ったら同じことが書いてあったの…。まさかと思って戻ってきたら…アンタがいて…」



静まり返る教室に入り、黒板消しをとった。その落書きを消して、手を下ろす。

私は、自分でも驚くくらい冷静だった。後ろで私を嘲笑うクラスメイトが容易に想像できたし、犯人が誰かもわかった。



「雅!」
「っ…富松くん…」



教室に入ってきたのは、富松くんだった。私を…私が持った黒板消しを見て、彼は悟ったみたい。大股で私に近寄ってきて、私の手を握った。



「…他のクラスのも、全部消したから…」
「ぁ…」



他のクラス、ということは…この落書きは他のクラスにも書かれていたんだ…

チラリとクラスを見渡したら、男子達がニヤニヤと笑いながら私を見ているのが見えた。富松くんもそれに気づいたようで、その男子達のもとへ向かった。



「テメェ…今すぐ雅の番号消しやがれ」
「なっなんだよ…あいつ自ら公開してんだからお前には関係ないだろ」
「っ!」



ガッ...



鈍い音が教室に響いた。
富松くんが、1人の男子を殴ったのだ。机ごとなぎ倒された男子は、赤く晴れた頬を押さえている。



「殺されたくなかったら…今すぐ、消せ」
「ひっ…」
「わ、わかった!わかったよ!」



富松くんの殺気に怯えた彼らは、一斉に携帯を弄りだした。富松くんは再び私に近づいて来ると、私の手を掴んだ。



「来い!」
「えっ…ちょ、富松くんっ!?」



どうしよう…
富松くん、怒ってるよね…?
私、どこに連れて行かれるんだろう…
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