泡沫ノ恋
□eleventh.
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「雅ちゃん、遅いね...」
「遅いっていってもら、まだ10分しか経ってないよ」
雅が担任と職員室に入ってから、俺達は気が気じゃなかった。何を言われているんだろう、とか、また誰かに目付けられんのか、とか、いろんな考えが頭の中でこんがらがっちまう。
そうやって考えてるうちに、雅は出てきた。
「っ...」
「雅、」
「わ、たし...私、は......ッッ」
「っ雅!」
泣きそうな声、
いや、泣いていた。震える声で、助けを求めていた。
実際に助け欲しいと言われなくたってわかるんだ。雅が、苦しんでること...
雅は、俺の手を振り払って去ってしまった。
「雅ちゃん、何かあったのかな...」
「......」
守りたいのに、
なあ、俺に言ってくれ...
助けて欲しいって、俺を頼ってくれないか...
「う、ひっく...ッッ...ん」
知らない。私は知らない。
援助交際なんて、してない。
また、遊佐くんの仕業なのかな。どうしてこんなことを?謝ればいい?謝れば、許してくれるの?
もう、止めてくれるの...?
ピピピピ ピピピピ
「!!」
遊佐くんからの電話だった。
知っている番号だけど怖かったから、食満さんが言っていたように1を押してから電話に出た。
『どうしたの?泣いてるね』
「...っ...あんたがやったの...?」
電話口で泣いているのがバレてしまったのが悔しくて、私はゴシゴシと目を擦った。
『ダメだよ、そんな強く目を擦ったら...腫れてしまう』
「え、?」
...なんで...
...なんで擦ったのがわかるの?
あ...音か。擦った時の音が聞こえたんだよね。
そう思いつつ、私は振り返ったり、周りを見回した。
『ふふっキョロキョロしてかーわいいー』
「なんでっ...!?」
『君の行動は手に取るようにわかるさ。愛してるからね』
愛してる?
ふざけないで…!
「わっ…私はあんたなんか大嫌い!!もう私に電話もメールもしないで!!」
『………………わかったよ』
「……」
わかってくれたの……?
『じゃあ、君を見るだけにするよ』
「え……?」
『君がベッドで雑誌を読んだり、友達と電話したり、お父さんとご飯を食べたりするところぜーんぶ、僕が見ててあげる。フフッ…何だか興奮しない?視姦プレイみたいでさ』
見てる……
今も見てるの……?
『震えてるね』
「いやっ…!」
私は、携帯の電池パックを外して放り投げると、カーテンをしっかり閉めた。
でもそれだけじゃ不安で、隙間がないようにガムテープで固定した。部屋のドアもテープで隙間を埋めて、壁に寄りかかるように蹲った。
隙間も何もないのに、まだ見られてる気がして身体が震える。
お父さん…お父さん……早く帰ってきて……!
「怖いよ……」