新訳ミツバ篇
□第7章
4ページ/4ページ
ザッ
庭のほうで、足音が聞こえた。
ミツバはハッとして振り向いたが、総悟は興味無さそうに、見向きもしない。
『沖田先輩、稽古の時間ス。』
だが総悟は、その声が聞こえたとたん、跳ね上がるようにして顔を庭に向ける。
するとそこには、土方の姿があった。
前髪はそのままで、長い後ろ髪を後頭部で1つにまとめて縛っている。
相変わらずキツイ目付きだが、やはりどこか、今よりは幼いかんじがする。
総悟『てめー、なんで人んちに来てんだよ!』
総悟は起き上がるなり何なり、そう叫んで土方に飛び掛かるも、あっけなく土方に左手で頭をわし掴みされる。
土方『近藤さんに連れて来いって頼まれたっス。』
タメ口に腹を立てている総悟の会話が聞こえたのか、あるいはまた別の理由があるのか、棒読みの敬語を使う土方。
……いや、敬語というには、敬意が足りない。
もっと、面倒臭さが表れている話し方だった。
土方『さっ、一緒に行きましょうか、先輩。』
そう言って総悟の袴のえりを掴み、引きずっていく土方。
総悟『いだだだだ!!
てめっ、それが先輩に対してとる態度か!!
てめー!!』
ギャンギャンそう叫ぶ総悟を無視して、土方は道場へ引っ張っていく。
その様子を見て、ミツバはクスクス、と笑っていた。
*