新訳ミツバ篇
□第8章
1ページ/4ページ
口元を手のひらで抑えながら笑っている姉上の表情は、今でも思い出す。
それはいいものの、なにか引っ掛かった。
土方に姉上を取られた、というか、なんというか…。
……気にくわねェ。
そう頭の中でぼやく。
俺はアイマスクを外し、寝間着のポケットに突っ込んだ。
すると、ふと向かいの別棟が目に入った。
そこには、練習着を来て、竹刀で素振りをしている土方の姿。
俺は寝間着から同じく練習着に着替え、竹刀を持って、向かいの別棟に向かった。
その縁側の廊下を歩いている最中に、もう1つ、昔のことを思い出してみた。
*
とある昼食の出来事だ。
近藤の誘いで、そば屋に昼食を食べに行った。
カウンター席に右から、土方、近藤、ミツバ、総悟という順番で座る。
みんなで同じそばを注文し、みんなで一緒に食べ始めた。