新訳ミツバ篇
□第10章
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屯所ではいまだに土方と総悟で打ち合いが行われていた。
総悟『土方さん、攘夷浪士どもがどんな武器もとうと、俺達が叩き斬りゃいいだけの話じゃねーですか。
小せェ話だ。』
だが勢いはお互いに増し、竹刀同士がきしむ音がするようになった。
総悟『清濁併せ呑む位の器量がなきゃ、商売やってけやせんよ。
それに商売はともかく、あの人の人柄はアンタも見たでしょう。
あの人は心底、姉上にほれてますよ。
きっと幸せに…、』
ガシャアアァァ
そう言いかけたところで土方に竹刀ではじかれ、あえなく言葉を遮った。
土方は2、3歩くらい後ろに下がり、体勢を整えてから言った。
土方『そいつァ俺に、奴を見逃せといっているのか。』
鋭い目付きで総悟を睨むように見る土方。
総悟『アラ、そうきこえやせんでした?』
それに対して、きょとんとしたように土方を見る総悟。
土方は総悟のその言葉を聞いたとたん、くるりと向いている方向を入り口に向け、口を開いた。
土方『今のはきかなかったことにしてやる。
気が失せた、あとは1人でやりな。』