新訳ミツバ篇
□第14章
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場所は武器の密輸取り引きが行われている、港に積み並ぶコンテナの上。
黒く染まった夜空には、無数の星が燦然と輝いていた。
海からそよぐ潮風が髪をたなびかせる。
鼻をこらすと、かすかに塩の香りがした。
背中にバズーカを背負い、俺はタバコを口にくわえる。
そして「奴」の背後にまわり、その首元に刀先を向けた。
土方『転海屋「蔵場当馬」だな。
御用改めである、神妙にしてもらおうか。』
そういうと、蔵場は案外、落ち着いた様子でふり返った。
必然的に目が合う。
蔵場『………。』
蔵場は一瞬その場で無言のまま俺を見たが、すぐに口を開いた。
蔵場『あなたはいつぞやの。』
俺は蔵場に向けた刀先はそのままにして言った。
土方『武器密輸及び不逞浪士との違法取引の容疑で、お前を逮捕する。
神妙にお縄につけ。』
すると蔵場は正面を向き、怪しげな笑みをうっすらと浮かべた。
蔵場『……フフ。
友人の婚約者をためらいなくつかまえますか。
なかなか太い神経をお持ちのようで。』
無気味な声でそう言った。