白蝶編

□プロローグ
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幸恵『……疲れた…。』

幸恵は溜め息まじりにそう言った。

高校からの帰り道。

空はとうに黒く染まっている。



ふいに腕時計に目をやった。

幸恵『今日も居残り勉強こんな時間までかかっちゃった。』

短針がさしているのは7。

疲れが一気に体にのしかかり、足取りも重くなる。

そうして人通りの少ない帰路をトボトボと歩いていると、ふと街灯の下になにかが見えた。



幸恵『……蛾?』

それは白い羽を羽ばたかせ、蛾にしては優雅で可憐な容姿をしている。

幸恵『蝶か…。』

無意識のうちにそれを追いかける。

蝶は街灯を離れ、ふらふらと舞い始めると、どこかに向かうように羽ばたいた。

幸恵『あっ!』



窮屈なこの街で、自由にとぶその蝶に、どこか惹かれる自分の心があった。

スクールバックを肩から右手に持ち替えて、蝶を追う。

本来なら真っ直ぐ進むはずの道だが、蝶が右折したから、幸恵も右に曲がる。

その先には、見知らぬトンネルがあった。
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