新訳ミツバ篇
□プロローグ
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満月が美しく輝く夜。
どこからか迷いこんだ黒猫も、黙って暗い空を見上げる。
辺りから犬の遠吠えが聞こえてくる、古い家が静かに並ぶその小路で、土方は1人タバコを吸っていた。
白煙を吐いたとき、ふと背中に衝動を感じた。
顔だけ後ろに向けると、土方の目に映ったのは、顔を帯で隠した男の姿。
それを確認して程なく、タバコを地面に落とし、その体から血が垂れた。
その男に、土方は刀で胸を刺されていたのだ。
土方『……て、てめェは…』
血を吐きながら、土方は男を睨み付ける。
意識が遠のいていくなかで精一杯の力を振り絞り、土方は倒れる寸前で、男の顔に巻いてある帯を掴んだ。
そしてそのまま地面に倒れこむ。
一方、帯を剥がされた男は、動揺する素振りさえも見せずにただ刀を握ったまま、鋭い目付きをしてこう言った。
総悟『土方の死体が4016体。』
刀を使って土方を殺したのは、総悟だった。
そして総悟は飽きることを知らず、次々と土方を刺していく。
総悟『土方のバカの死体が4017体。』
総悟の後ろには、いくつもの土方の死体が転がっていた。
総悟『土方のあんちきしょーの死体が4018体。』