新訳ミツバ篇

□第7章
2ページ/4ページ




……調子狂うぜ…

そう考えて、俺は屯所の縁側に寝転がる。

猫がこういう場所で寝る理由がよく分かった。

太陽からの直接あたる日。

それにくわえて、今まで暖められてきた廊下が、床暖房のようになっている。



時折、廊下に隊士たちが通った。

そのたびに

「あっ沖田さん、おはようございます。」

「沖田さん、起きていたんですね。」



「昼食はラップに包んで、とっておいてある、って食堂の料理人が言ってましたよ。」

「まったく、今日もサボるんですか、隊長は……。」

と声をかけられた。



俺はそれ全てに空返事をして、こめかみをかく。

昼食がとっておいてある、といっても腹は減っていないし、ヒマなものだったから、
少し昔のことを思い出した。



 *



9〜10年ほど前の、ある夏のこと。

外ではセミが忙しく鳴いている。

場所は武州。

その中でも敷地を木々に囲まれた、田舎のようなところ。

2人だけで暮らすには少し広いその屋敷で、ミツバと総悟は暮らしていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ