新訳ミツバ篇
□第7章
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……調子狂うぜ…
そう考えて、俺は屯所の縁側に寝転がる。
猫がこういう場所で寝る理由がよく分かった。
太陽からの直接あたる日。
それにくわえて、今まで暖められてきた廊下が、床暖房のようになっている。
時折、廊下に隊士たちが通った。
そのたびに
「あっ沖田さん、おはようございます。」
「沖田さん、起きていたんですね。」
「昼食はラップに包んで、とっておいてある、って食堂の料理人が言ってましたよ。」
「まったく、今日もサボるんですか、隊長は……。」
と声をかけられた。
俺はそれ全てに空返事をして、こめかみをかく。
昼食がとっておいてある、といっても腹は減っていないし、ヒマなものだったから、
少し昔のことを思い出した。
*
9〜10年ほど前の、ある夏のこと。
外ではセミが忙しく鳴いている。
場所は武州。
その中でも敷地を木々に囲まれた、田舎のようなところ。
2人だけで暮らすには少し広いその屋敷で、ミツバと総悟は暮らしていた。