新訳ミツバ篇
□第16章
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そう言う旦那の両目の目元には、クマができていた。
あきらかにボーっとしている瞳を俺に向け、口を開ける。
銀時『最後までつきあうぜ、総一郎君。』
総悟『………旦那、クマ。』
俺がそう言うと、旦那はさして気にしてもいなさそうな顔をした。
そして腕を組み、俺にこう言った。
銀時『チンピラに殴られた。』
……姉上、俺ァ幸せもんだ。
長ェ人生でもそうそう会えるもんじゃねェ、そんな悪友を人生で3人も得たんだ。
*
土方『おおおおお!!』
そう怒声が鳴り響き、夜の港では騒動が起きていた。
たった1人、真選組副長土方十四郎のまわりを、ざっと1000は越すだろうか、それくらいの攘夷志士が取り囲む。
一斉に斬り合いが始まり、場が白熱していくこの状況の中、たった2人だけ、落ち着いて会話している人がいた。
『話が違うではないか、蔵場殿。
幕府の犬は既に抱き込んだ、ときいていたが。』
蔵場の隣でそう言う男。
蔵場は黙ってその男の話を聞く。
2人は、港の端に隠れるように積まれている、コンテナの上にいた。
『あれなるは真選組でも、鬼の副長と恐れられる土方十四郎。
アレにかぎつけられたのでは、卿も我等もタダではすむまい。
もうじき加勢も来よう。』