本郷 奏多

□もうすぐ季節がやって来る
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天気予報の予想気温より寒く感じられる空気から避けるように家に上がる。



暖房の効いている床にねっころがるも、

こたつを視界の端に捉えた途端、
その中へ潜り込んだ。







「人の家に来てそれかい。」


「だって寒いじゃん。」


「確かに。でも自分の家帰ればいいじゃん。」


「やだ。みゆの家がいい。」


「なんで。」






ぶつくさ言いながらも、みゆはいつもの青と黄色のマグカップにココアを注いだ。

勿論ホットのやつ。




スプーンでくるくる掻き混ぜて、
青いマグを僕に手渡す。


ミルクの微かな甘い香りが食欲をそそる。



…あ、甘いお菓子食べたくなってきた。





「みゆの家居心地いいから来ちゃうんだもん。」




ココアを一口飲んでから言うと、

みゆは驚いて
頬を仄かに赤く染めた。



あ、照れてる。可愛い。





「みゆ、お菓子食べたいなー。」


「駄目。」


「え、なんで。」


「奏多が長居するから。」


「いいじゃん、みゆと一緒にいたい。」





みゆの肩を抱き寄せて、耳元で囁く。



あ、また赤くなってる。






「………このまま一緒に住んじゃおっかなー……」


「なっ………!?」


「クスクス…





いっそ結婚する?」










Gジャンのジャケットから取り出した小さな黒い箱をみゆの前に差し出す。




恐る恐るそれを手に取り、

みゆは僕を見た。




開けていい?と言うように。



だから僕は頷いた。

むしろ開けてくれ、って。











「…………何かの夢じゃない、よね…?」



「夢じゃない。

みゆのこと、
本気で愛してる。




本気で幸せにするから。













……結婚しよう。」






もうすぐ季節がやって来る








(これからの季節は)

(ずっと一緒だよ、みゆ。)








End.

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