ベストコンビ

□能天気と几帳面
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今日はみゆとお昼ご飯を食べに来てる。



「奏多ー胡椒取ってー」


「ん。」




近くにあった胡椒をみゆに手渡す。



みゆはそれをカルボナーラにばらばらと掛けた。






「……みゆ。」


「なぁに?」





僕は思わず溜息が出た。


カルボナーラのお皿を指差すと
みゆは首を傾げた。






「カルボナーラが、何?」




「それじゃあ胡椒が一カ所に固まって、そこだけ辛くなる。」


「食べちゃえば同じじゃん。混ぜればいいし。」


「……信じらんない。」







可愛いし気配りもできるし、頭もいいんだけれど




みゆの唯一の欠点。


それは、すごく大雑把なこと。





若干僕はそれを許せない時がある。







「…わ、辛い。」


「だから言ったのに。」


「水ーっ。」


「はいはい。」





コップに水を注いでみゆに渡すと

ものの数秒でそれは飲み干された。







「みゆは大雑把すぎ。いつも言ってるのに。」


「ごめんなさい……」







みゆはしゅんとして俯いた。





この瞬間がまた可愛いんだよね。


犬みたいで。




「……みゆ、食べなきゃ冷めちゃうよ?」


「うんっ。」





そしてまたぱあっと明るくなる。



やっぱり可愛い。







「デザートのフルーツパフェをご注文のお客様…」



「あっ、私ですっ。」






食べ終わったカルボナーラのお皿を店員さんに渡し、

目の前に置かれたパフェに

みゆはまた子供みたいに嬉しそうにする。





「奏多はガトーショコラ頼んだのね。」


「最近ハマってるからね。」






付け合わせのクリームを少しだけ乗せて、ケーキを口に運ぶ。



生クリームは、乗せすぎると甘ったるくなるし
逆に少ないと苦味に負ける。



だから

ちょうど良い具合にクリームの量を調整するのが楽しいしハマった理由でもあって。











「……甘ったるい………」



「は?」








ガトーショコラを噛み締めていると

目の前のみゆが言葉とは裏腹に苦笑いしていた。






「どうした?」







僕が尋ねると


みゆは視線をパフェから反らした。








「……プリンにクリームつけすぎたら甘かった………」




「…普通考えて食べるだろ……」








僕はまた溜息をついた。





















結局、僕がパフェを手伝うことになり





食べ終わる頃は口の中が甘ったるくて仕方なかった。







甘党の僕達ですら、かなり辛かった。











「みゆ、もうちょっと几帳面になろうね……」


「はい……」







伝票を手に、会計へ向かう。







「お会計、2400円になります。」





僕が財布を出している横で

みゆが一瞬固まる。





そしておもむろに僕に1450円を渡してきた。








「カルボナーラとパフェ、これだけだったよねっ。」





みゆは暗算が得意だ。



だから瞬時に計算したんだろう。










でも、

僕はそれを受け取らず





財布から2500円を出して店員さんに渡した。











「か、奏多…?」




「いいの、これで。」





「だって、私の分…」




「…………じゃあ、」









僕は500円玉を仕舞い、


代わりにみゆの手から100円玉を4枚受けとって

再び店員さんに渡した。








「ちょうどでお願いします。」
















お釣りがないほうがすっきりするでしょ。







呆然とするみゆに

僕はそう言った。












能天気と几帳面






(「や、だ、駄目だよ私ほとんど出してないし…」)

(「いーの、気にしない気にしないっ。」)

(「さっき几帳面になれって言ったの誰よー」)









End.

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