ベストコンビ

□過保護とひねくれ者
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「みゆ、鞄開いてる。」

「……。」



みゆは僕を睨んでから
ガバッと鞄のチャックを閉めた。


おまけに僕の足をローファーで踏んでから
またつかつかと前を歩き始める。




「みゆ、」


「今度は何っ。」




また睨む目つきで僕を振り向いたので


僕は緩んでいたみゆのリボンをさっと直した。





「あんまりせわしいから、リボンよれてる。」


「自分でできるっつーのっバカナタ!!」




べーっと舌を出して、みゆは僕に背を向ける。


僕は置いていかれないように
速足でみゆを追った。





でもそのうちに



みゆはつまづいてよろめくのがいつものオチ。






「……っわ…!!」


「みゆっ。」








今日もやっぱり
みゆは段差に足を引っ掛けた。



腕を前に出して
みゆの細い腕を掴んでぐっと引き寄せる。




みゆはすっぽりと僕の胸の中に埋まった。






「みゆ、注意力なさすぎ。いつもコケてる。」


「奏多に言われたくないっ。」




腕の中にいるのに


みゆはちっとも目を合わせようとしてくれない。




僕は、安堵か呆れか分からない溜息が漏れた。


みゆはまだそっぽを向いたままだ。







「奏多。」


「ん?」


「離して。」


「やだ。」


「離して。今すぐ。」






腕を解こうとするみゆだけれど

僕の力に敵うはずもなく



しばらくすると大人しくなった。







「…離して。もういいでしょ。」


「やだ。みゆ危なっかしいもん。」


「奏多が後ろからついて来るから速歩きするんでしょうが。」


「みゆは僕がいなきゃ怪我するじゃん。」


「しないもん。…多分。」


「やっぱり心配だ。」


「だからってついて来なくたって…」


「じゃあこれでいい?」







僕はみゆを解放した。



みゆはすぐにまた逃げようとしたけれど

そうなる前に



僕は左手で
みゆの右手を握った。










「並んで歩くのはいいでしょ。手も繋いだら、みゆは転ばなくて済むし。」












過保護とひねくれ者










(「やっぱり奏多はバカナタだっ。」)

(「でも、嫌じゃないんでしょ?…握り返してくれてるってことはさ。」)

(「る、るっさい…っ!!」)









End.

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