生徒K.H

□日直ですよ、先生
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ある朝、
黒板にプリント提出を促すよう書き込もうと教室に行くと





「あら、おはよう。」


「おはようございます、松坂先生。」







本郷君が
花瓶に水を入れてくれていた。







「本郷君が水やりしてくれてたんだね。」



「いえ、日直の仕事ですから。」





本郷君とお花って、なんか粋だなぁ。






ちょっとうっとりしちゃう。










「本郷君って女の子にモテるでしょ。」




「いやだなぁ。そんなことないです。」




「えー?だってよく女の子達が、本郷君カッコイイって言ってるよ?」




「そんなことないですよ。」






また子犬みたいに可愛く笑って




それから小さく「あっ」と声を上げた。








「そういえば、どうして先生はこちらに?」



「………あ、そうだ、黒板書きに来たんだった。」







慌てて黒板に向かう私を
本郷はケラケラ笑いながら見ていた。






「ま、そういう松坂先生こそ、男子にモテてますけどね。」




「えぇ!?」








驚いた拍子に、持っていたチョークを落として割ってしまった。


床に白い粉が飛び散る。






「わ、やっちゃったー……」



「僕に任せてください。片付けますよ。日直ですから。」




「いや、それ日直関係ないでしょ。私やるよ。」




「……そうですね、関係ないや。」









そう言うと本郷君は


私が取り出してきたちりとりやほうき一式を全て取り上げた。






いや、会話が噛み合ってないような気が。











「……今、日直関係ないって言ったよね?」


「はい、言いました。」


「じゃあ、なんで本郷君がそれ持つの?」





掃除用具を指差すと


彼はとぼけたように首を傾げて


「僕がやっちゃいけませんか?」


なんて言うから






「じゃあお願いします…」


と頼んでしまったのだ。










日直ですよ、先生








(好きな人のために)

(何かをしてあげる。)

(理由なんていらないですよね、みゆ先生?)








End.

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