生徒K.H

□テスト期間ですよ、先生
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あれから奏多君は毎日毎日英語科準備室で勉強している。




たまになら、って言ったのに……。





それでも

なかなか真面目にやってるし



私の目のつく場所にいてくれるから

なんとなく安心している。








「松坂先生。」







他の先生がいるから

今はさすがに苗字呼びだ。








「少しよろしいですか?勉強法で相談があるんです。」




「勿論。じゃあ相談室開けるわね。」





手前の棚から鍵を取り出し、

相談室のドアを開ける。





奏多君を先に教室に入れると


背中越しに先輩である先生から
「仲が良いねぇ」と茶化されてしまった。
















「………で、相談って?」






奏多君と向かい合わせに座ると

彼はさっきまでの優等生面から
悪戯っ子みたいな顔付きに変わっていた。









「みゆ先生と話したかっただけ。………じゃ駄目?」





くすっと笑いながら上目遣いで言われると

さすがにドキッとする。







私は咳ばらいしてから

理性でなんとか自分を押さえ込んだ。










「あんまり先生をからかうんじゃありません。」



「からかってない。僕は本気ですよ。」



「………笑いながら言われても説得力無いんだけど。」








奏多君は尚もニコニコしながら私を見つめていた。









「そういえば、奏多君、最近毎日残ってるね。」



「テスト勉強してるんですよ。英語科教室は落ち着くし、はかどるので。」



「静かだし、クーラーきいてるもんね。」



「みゆ先生の近くにいられますしね。」



「ほら、またそうやって私をからかう。」



「だから、僕は本気ですってば。






…………あ、そうだ。」









私が睨んでるのとは対称的に



奏多君はいきなりぱっと顔を明るくした。









「テストで学年10番以内に入ったら、お願いを聞いてください。」





「………ご褒美が欲しいってこと?」







訝しげに尋ねると


奏多君は「はいっ!!」と元気よく頷いた。










「……一つだけ、ね。」





「あ、ありがとうございます……!!」















向日葵みたいに明るくなった奏多君の表情に






私は溜息しか出なかった。






…………何を言われるのかという恐怖に押し潰されそうな





テスト

4日前。




















テスト期間ですよ、先生








(「先生、やりましたよ!!」)

(「え、ホントに学年10番以内!?」)

(「8番ですよ。」)

(「……マジで。」)

(「約束通り、ご褒美いただきますよ、みゆ先生。」)

(「…………。」)









End.

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