生徒K.H

□夏休みですよ、先生
2ページ/2ページ

 





そして




夏休み2日目。
















「おはようございます、みゆ先生。」




「ごめんね、電車に乗り遅れちゃったの。」



「僕も今来ましたから。」





男子生徒と二人で出掛けるって

なんてヤバイことしてるんだ私は。





内心冷や汗モノだが

今さら引き返すわけにはいかない。






市民ホール前は

やはり有名劇団らしく
かなり長い列ができていた。



開場まで30分以上はあるのに、だ。






「へぇ、今回はこの人が主演なんだ…」






奏多君は興味深そうに、配られたパンフレットを見ていた。



正直私には分からないので
「その人有名なの?」ときいてみた。




「あっちでは大スターですよ。テレビや映画には絶対出ないって意味でも。」


「舞台専門なんだね。」



「舞台にかなりのプライドがあるそうです。」







そこで初めて


奏多君が制服じゃないことに気が付いた。





黒いベストに白シャツという
シンプルなオシャレが彼らしい。



制服を着てても思うけど

彼は線が細いから
余計にカッコイイ。



実際、周りの女の子達はちらちらと奏多君を見ている。




新任でまだ20代とはいえ
多分私は若く見えるお母さんかなだとか思われているんだろうな。




………かなり傷付くけど。









「ねぇみゆ。」



「なぁ…………え。」





なぁに、と言いかけて

私はとっさに彼を向いた。







「……今、呼び捨てしたよね。」


「夏休みですから。ここ学校じゃないですしね。」


「いや、だからってそれはどうなの。」


「駄目?先生って聞こえちゃまずいんじゃないですか?」







勝ち誇ったような笑みを向けられ

私は返す言葉を失くした。










「……みゆさん、でどう?」











いかにも「仕方ないなぁ」みたいな言い方がムカついたけど

奏多君なりの配慮を
私はありがたく受け取ることにした。














「……じゃ、これ貸しですから。」



「は?」








きょとんとする私を

奏多君はまたニヤリと笑いながら





「またデートしてもらえるなら、先生って呼ばないであげるってことです。」














夏休みですよ、先生








(「お、鬼……!!」)

(「なんとでもどうぞ。…次のデートはいつがいいかな…。」)

(「気が早くないですか奏多君。」)

(「みゆさん面白いんだもん。」)

(「関係ないでしょ……はぁ……」)










End.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ