生徒K.H

□体育祭ですよ、先生
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秋晴れです。





暑すぎず


寒すぎず







気温はお昼寝には最適ですが













周囲の状況的には









不適です。
















なぜなら、
















「奏多くーーーん!!」


「「「キャーーーーー!!!」」」










飛び交う黄色い声援の煩さといったらありませんこと!!!!







そう、










今日は



体育祭なのです。
















あの告白以来

奏多君は私にくっつかなくなり



お互いに
避けているような感じになった。













だから、





この声援が

少し辛い。













聞きたくなくて






私は少し陰へと移動した。















奏多君はサッカーに出ているから




あと5分で休憩に入る。



















私の足は



プールの裏へと向かっていた。
















ここは風通しもよく

あまり人も来ないから



奏多君が気に入っているのを
私は知っている。











時計を眺めていると



遠くからホイッスルが聞こえてきた。





続いて女子特有の甲高い叫び声。








多分 奏多君のチームが勝ったんだろう。















ぼんやりそんなことを思っていると




壁の向こうから人影が見えた。



















「みゆ先生……」




「お疲れ様。」










やや戸惑っている彼を




私は初めて見た。












奏多君はわざと私と目を合わせないようにして

目の前を通り過ぎて




少し離れた場所で

プールの壁に背中を預けた。
















前は


すぐに触れられる距離だったのに











今は



こんなにも遠い。
















「ねぇ奏多く「あの日の告白の返事、先生くれませんでしたよね。」………」















明らかに怒った口調だった。











そんなのは初めてだったから


今度は私が戸惑う番になった。















「ずっと待ってたのに。






先生、

次の日からよそよそしくなっちゃって




まるで

今までのこと全部無かったみたいに振る舞って。















僕、


……傷付きましたよ。」








「だって奏多君だって

毎朝早かったのに
あの日から遅刻ギリギリに登校するし


居残りしなくなったし



私に話し掛けなくなったじゃない…!!」






「それは……っ」
















奏多君が

私に近付く。














左右に手をつかれ



壁に押し付けられる形になり









私は逃げ場を失くした。
















「………告白したあとに今まで通りに接するなんて



できないですから……」













最後のほうは



声が掠れて

言葉になっていなかった。














彼は俯いて





両手を壁から離した。












「………僕じゃ



みゆ先生を幸せにできないのかって

ずっと、考えてました…。








みゆ先生と話せない日が続いたから






嫌われたのかなって








怖くなったんです。













……だから



振るなら振っ「私がいつ奏多君を嫌いだって言ったの?」















考えるよりも早く



私の唇は動いた。











「私は、嫌いな生徒に付き合って
休みの日に舞台や映画になんて行かないし


毎日放課後に勉強教えたり
おやつあげたりしないよ?」









「……じゃあ……」















「私も、奏多君が好きだよ。」














私は


大変な境界線を越えてしまいました。














体育祭ですよ、先生








(「…じゃあ、これで恋人ですね。」)

(「は、恥ずかしい…」)


(「学校ってシチュエーションが、イケナイ感じしますよね…クスッ」)

(「いや、私は本当にイケナイことしてるんだよ…」)


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