生徒K.H

□いいですよ、先生
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「ねぇ、奏多君。」


「何ですか、先生。」






廊下だから
お互い少し距離を置いて話す。




回りに生徒がいる間は
あくまで私達は「先生と生徒」だ。







「模試のことで質問なんですけど…」



「へぇ、奏多君が質問なんて珍しいじゃん。………はっ。」












私は慌てて口を閉じた。




いつものクセで
すぐ馴れた口調になってしまう。


最初の一言二言話したところで
私は周りに人がいるのを忘れてしまうから
いつも焦る。






その点、
奏多君は絶対にボロが出ない。


演技が上手いなぁとつくづく思うのだ。






……まぁ、
仮面の下は恐ろしく計算高い、ませた少年ですが。














「……先生、大丈夫ですか?」



「あ、うん、ごめんね?」



「心配させないでくださいよ、びっくりするじゃないですか。」










奏多君は小声で私に耳打ちした。




あぁもう、私の苦手な部分を……!!








「あんまり無理しないで下さいね、先生。」



「あ、ありがとう…」


















そして、









その放課後。
















相談室で模試の質問に答えてから


奏多君はまた顔をころっと変えて



「みゆさんは本当に馬鹿正直だから、いつバレるかヒヤヒヤします。」
と毒づいた。









「ごめんなさい……」




「まぁ…良く言えば素直なんですけど。」



「うん、……。」















全く、情けない。






彼に負担を掛けてしまっている自分がふがいなくて

溜息が漏れた。











「それも……みゆさんの長所ではありますけどね。」


「え……?」




















いいですよ、先生








(みゆさん分かりやすいから、嘘ついたらすぐ分かるもん。)

(してほしいことも)

(すごく僕が好きだってことも)

(伝わって来ちゃうんだよね。)








End.

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