妖精の尻尾【中編】

□二人の過去
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川辺の草むらで仰向けになり、昼寝をするグレイ。
川がサラサラと流れる音を聞きながら、ウトウトする。




『・・・ギルなんか・・・大っ嫌い』

わぁ〜ん・・・と泣きながら、走り去っていく少女。

グレイはその少女にかける言葉を持ち合わせていなかった。

「ベル!!」

駆け出すベルに呼びかけるが、ベルは振り返らず森のほうへ、走り去っていく。

グレイは追いかけようとするが、ギルダーツにとめられる。

「あいつの事が心配か?」

「・・・・」

小さく頷くグレイに、ニカっとギルダーツは笑いかける。

「あいつは気が強いよなぁ・・・一体誰に似たんだか・・・」

「なぁ、グレイ。見ろよ。マリアって言うんだ」

写真の女性は、とても美人で、とても可愛らしい人だった。どことなく雰囲気が、ベルに似ている。

「オレの一目ぼれでな・・・」

ギルダーツが前を向いたままポツポツと語りだす。

「とても愛おしく、大切な人だった・・・・」

「・・・だった?」

「ああ、彼女も同じ魔導師で、自分を犠牲に、オレを助けて逝っちまった」

切なそうに語るギルダーツの顔・・・・。

「ベルはあいつの忘れ形見なんだ。守ってやってくれ・・・グレイ」

ポンポンと少年のグレイの頭をなでる。

それから何日間か、ギルダーツはベルに厳しく魔法を叩き込む。

ベルは毎日泣きながら、でも少しずつ、成長していった。

『グレイ、見て〜!水晶が作れたよ〜』

その頃のベルは、水晶を作るのがやっとだった。

キラキラと輝く水晶を大切そうに手に掲げる。

「やったな!」

「よくがんばったぞ」

『えへへ・・・』

ギルダーツとグレイが褒めてくれるのが嬉しくて、ベルはどんどん練習してうまくなっていった。


いつもの練習場へグレイが顔を出すと、なにやらギルダーツとベルが言い合ってる声がしたので、グレイは顔を出さずに、木の陰に隠れる。

「しょうがないだろ?マスターに頼まれた仕事なんだ。行かなきゃならないんだよ」

『だって、だって・・・ギルはずっと帰ってきてくれない!!もう一人はやだよぉ』

「泣くな。もうお前は一人前だ。オレがいなくても・・・」

『ギルのばかぁ!!!』

ダッと駆け出すベル。

「おい、ベル・・・」

ギルダーツは、力なくそこへうな垂れる。

「・・・・・グレイ、いるんだろう?そこに・・・。わりぃけどベルを追いかけてくれるか?」

「・・・わかった」


グレイはベルの駆け込んだ森へと急ぐ。

「ベル〜!!!」

力の限りの声を張り上げ、ベルを探す。

「ベル〜!!!!」

『きゃぁぁぁぁっっ!!!』

その時、ベルの悲鳴が森に響き渡った。

「ベル!!」

声のする方へ、全速力で向かう。

そこには魔力を持った、熊がまさにベルを襲いかかろうとしていた。

「ベル!!アイスメイク・・・プリズン(檻)!!」

熊を氷の檻に閉じ込めた。

『・・・グレイぃ』

ひぃっくっと泣きながら、グレイの腕にベルはすがりつく。

「もう大丈夫だ。オレが守ってやるから」

『ぐ、グレイ・・・っ・・・!!!後ろ!!!』

グァウッ!!!熊が檻を壊し、二人に襲い掛かる。

「うわぁぁぁ!!!」

グレイはベルを庇い、熊の攻撃をまともに食らう。

『グレイ!!!! 』

辺りはグレイの血の海ができる。

興奮した熊はなおも攻撃を加えようとした時だった。

ギルダーツが駆けつけ、熊を叩きのめす。

「大丈夫か?!」

『ぐ、グレイが・・・・っ』

「くそっ!これは深いな・・・」

『死んじゃうの?グレイ・・・』

「・・・・」

『嫌・・・そんなの・・・いやぁぁぁぁぁっ!!!』

あたりには金色を光が溢れる。

「こ、これは・・・っ、あの時のマリアと一緒・・・・っ」

光がやんだあと、傷の癒されたグレイと生気のないベルがそこに横たわる。

「・・・ギルダーツ?どうしたんだよ?あれ?オレ、熊に襲われて・・・」

「・・・グレイ、すまなかった。ギルドまで歩けるか?」

「ん?あぁ・・・ベル・・・」

「大丈夫だ」

そういうギルダーツの顔は蒼白だった。

急いで二人はギルドへと戻る。

「マスター!!」

「ど、どうしたんじゃ?ギル・・・むっ・・」

「・・・マスター、あの時と同じだった・・・。なんでベルが・・・」

「とにかく、医務室へ運ぶんじゃ。ん?グレイは大丈夫なのか?」

「ああ、ベルの治癒魔法で・・・」

「え?・・・一体、どういうことだよ?!ギルダーツ?!」

「いいから、おまえはここにいろ」

慌しく、マカロフとギルダーツは医務室へ消えていく。


それから一週間ベルは眠り続けた。
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