妖精の尻尾【中編】
□s リップ
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「おーい、そろそろ行くぞ〜」
ベルの前の部屋のドアに立ち、ノックするが返事がない。
「ったく、また寝坊か〜?」
グレイは少し嬉しそうに、部屋へ入る。
「ベル〜、入るぞ、ってかもう入ってっけど」
ベットの布団はどう見ても、人がいるとは思えない厚さだ。
「ベル?」
一応めくってみる。
「おい、ベル・・・」
『グレイー。こっち。おはよっ』
洗面所のほうから声だけが聞こえる。
「なんだよ、おいてく・・・ぞ・・・?」
ベルはなにやら、鏡に向かい、両手にリップを持ち何度も塗っては、唇をすり合わせる。
「おまえ、何やってんの?」
くるっとグレイの方を振り返るとにっこり笑う。
『こっちは、ストロベリー味、こっちはブルーベリー味』
「・・・・?」
『混ぜたら、ミックスベリー♪』
「・・・・なにやってんだ、朝から」
グレイはあきれたように、その様子を見守る。
『だって、ミックスしたほうが、おいしそうでしょ?』
「おまえな〜・・・」
ベルの唇からは、甘い匂いがする。
「そのリップどうしたんだよ?」
『エルザにお土産でもらったの』
ぷるんっとした唇が、とてもおいしそうだ。
(いかん、いかん・・)ぶんぶん頭を振るグレイ。
『グレイ・・・何してんの?』
「や、別に・・・」
『味見したい?』
「え?・・・////いいのか?」
『?いいけど?』
グレイはギュッと目をつぶる。
ベルは唇のリップを指先にとり、グレイの唇に塗る。
『ほら、グレイこうやって、んぱって』
「(なんだよ・・・キスしてくれんのかと思ったぜ・・・んな訳ねぇか)おう・・・」
『ミックスベリー?』
「ん〜・・・・そうだな・・・ストロベリーって感じか?」
『じゃ、もうちょっとベリーを・・・』
「おい、もう置いてくぞ」
『もうすぐだから・・・っ』
「ったく・・・」
ベルを洗面所においたまま、ソファーにグレイは戻る。
グレイは唇のミックスベリーを舐める。
(今、あいつの唇食べたら、こんな味・・・か?)
「グレイ、何をニヤニヤしている?」
そこにはグレイの前に、腕を組み仁王立ちするエルザがいた。
「んな?!エルザ!いつから、そこに?!」
「さっきからだが・・・ベルは?」
「なんかリップつけてるぞ」
「ふっ・・・グレイ。唇が光ってるぞ」
「げっ!!」
慌てて、ティッシュでふき取る。
『あ、エルザ。おはよ!』
「ああ、おはよう。ん?リップ早速塗ったのか?」
『うん。二つの味を混ぜてみたの♪ミックスベリー』
「ははは・・・ベルは、おもしろい事するな」
『グレイ?どうしたの、唇真っ赤よ?』
「あ、いや、なんでもねぇ・・・」
「それでは、ギルドへ行くぞ」
『は〜い』
エルザとベルは並んで歩きながら、きゃっきゃ、きゃっきゃと楽しそうだ。