図書館戦争

□出会い
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図書特殊部隊長が、朝礼を始める。

「今日は紹介したい人がいる」

玄田に言われ、みんなのまえに現れた女性。


『本日から、業務部に配属されました、
咲原 アリアです。よろしくおい願します』

ゆるりと頭を下げ挨拶する。


「咲原は急遽、業務部へ転属となった。
わからない事も多いだろうから、みんなよろしく頼んだぞ」

堂上はじめ、二等図書正達は、アリアをはっとしたように見つめる。
アリアは柴崎と目が合うと、目で挨拶する。

「知り合い?」

笹原が、柴崎に尋ねる。

「・・・知らない・・と思う・・・
だけど・・・」

「だけど?」

「この時期に入って来るなんて、変わってるよね?
どっかから抜擢されての転属だと思うけど・・・」

「優秀な子って事?」

「そうね。それはきっと間違いないわね・・・
それに、おそらく・・」

「なあに?」

「あ、ううん。なんでもない。
さ、本の整理に行こう」

「あ、うん・・・」


「堂上、咲原に館内を案内してやってくれ」

「俺がですか?」

「まー・・、館内案内だけじゃないからな」

『・・・よろしくお願いします。・・・堂上教官』

「・・・俺は咲原の教官じゃない。」

『・・・いえ、元教官です。直属ではなかったんですけど・・・』

「・・・特殊部隊にいたのか?」

『ええ・・ま、しんどくなっちゃって辞めちゃいましたけど・・・』

「・・・・」

渋い顔をする堂上。

『どうかしました?』

「いや・・・、そんな理由で辞めるようには見えないな・・・と思ったから」

『・・・さっき会ったばかりでそんな事わかるんですか?』

「・・・いい加減な人間かそうでないかぐらいは、わかるさ」

『さすが、教官』

「・・・堂上、でいい」

『堂上・・さん』

「ああ」



2人は、館内へと歩いていく。



「あれ?堂上教官といるのって・・・」

笹原が、館内を二人で歩いてるのを見つける。

「あら、咲原さんじゃない」

「・・・・」

「微笑みあっちゃって・・・笹原、あんたぼーっとしてるととられるわよ?」

「と、とられるって・・・っ
教官とは・・別に・・・その・・・」

「ふふ・・・まったく可愛いんだから。」




・・・――――



『堂上さんは、ここ長いんですか?』

「ああ、まあ・・・」

『そうですか・・・
あ、すごい・・・展示物・・・』

展示室で、足を止める。

そこには図書隊の歩みの歴史が展示されている。


『すごいですよね・・・みんな命をかけて、本を自由を守ろうとしてる・・・』

その展示物をアリアは冷めて目で見つめる。


「・・・咲原?」

『私・・・図書隊にはなりたくなかった・・・』

誰に言うでもなく、アリアは呟き、ぐっと手を握りしめる。


「・・・なあ--」

『さっ、次案内お願いします』

アリアは笑顔を堂上に向ける。



「待て」

『どうしたんですか?』

「じゃあなぜ・・・?」

『人にはそれぞれの正義があります・・・
その正義が、大切な人と同じだったらいいのにと思います・・・
堂上さんは・・・そう、思いませんか?』

「俺は・・・図書隊として・・守るものを守るだけだ」

『そうですね・・・図書隊として・・・』

そう呟くアリアは、今にも泣きそうなそんな表情をしていた。


「・・っ咲原・・・」

堂上はなぜだか、その小さな肩にのしかかっている何かを・・・感じ取っていた。

堂上が、アリアの肩に手をかけようとしたその時――

「堂上さん」

柴崎が、笑顔で声を掛けてきた。

『・・・・』

「館内案内なら私が。
上官が呼んでらっしゃいましたよ」

「・・・わかった。
じゃあ、頼む」

堂上の姿が見えなくなったところで柴崎が話し出す。

「柴崎 麻子です。
同じ業務部なの。よろしくね」

『・・・知ってます』

「・・・でしょうね。
でもそこは、知らぬ存ぜぬで通すべきじゃない?」

『・・・』

「なぜここへ配属されたの?」

『本位じゃありません』

「本位じゃないってことは・・・やっぱりあなたは図書隊に否定的なのね・・・」

『・・・私のこともうお調べになってるんでしょう?』

「ええ、まあ。」

『じゃあここへ来た経緯もしってるんでしょう?』

「知ってるわ」

『じゃあほっといてください』

「そうもいかないの。
仕事だから。」

『さすが柴崎先輩ですね』

「同じ業務部、いえ、情報調査員でしょ?
仲良くした方がやりやすいじゃない?なにかと・・・」

『・・・・・』

「・・・堂上教官の事でも調べてるの?」

『いえ・・・そうゆう訳じゃ・・・
私、まだこの仕事慣れなくて・・・
嘘がつききれないんですよね・・・
向いてないんです。本当は・・・』

「私はそうは思えない。
この時期にっこに配属されてくるって事は、
それなりの事ができるからでしょう。
もっと自分ができる事に、自信を持ちなさいよ」

『ありがとうございます・・・』

「・・・ほんとうにいいの?」

『・・・・それは兄の事を言ってるんですか?』

「そうよ」

『兄は兄の正義があった。
私には私の正義がある。
・・・いつか、戦わなくてもいい日がくるまでそれは変わりません』


「そう・・・
咲原がどんな想いを抱えているかは、全部はわからないけど、ここにいる人はみんないい人たちよ。
信じてあげて」

『・・・・』


2人で図書館へと足を進める。






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