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□君とお散歩。
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ある天気の良い昼下がり。
魔界の王宮の一室で、
ゼオンが今日の仕事をしていた。
すると─────、
「ゼオン、散歩に行かないかい?」
ドアが開いて、ひょっこり顔を出した少女。
ゼオンの許嫁でもある、ラピルである。
「…散歩だと?」
愛しき彼女の声に顔を上げると、
いつもの無表情でラピルは答えた。
「うん、散歩。
ちょうど仕事が一段落つく頃だと思ってね」
…確かに、とゼオンは自分の手元に視線を落とした。
ちょうど一段落ついた所だったのだ。
ゼオンが少し考えていると、
「…無理なら、構わないよ。
パムーンと行くからさ」
ラピルの言葉に、ゼオンはぴくりと眉を上げた。
…パムーン、だと?
あぁ、確か千年前の魔物の───…
「ごめん、仕事忙しいだろう?
じゃあ、パムーンと行ってく、」
「行くぞ。」
ガタン、とゼオンが立ち上がる。
「…え?」
瞬きを数回繰り返すラピルの腕を引く。
「え、ゼオン、仕事は、」
「誰も行かんとは言ってないだろ。
…それとも、オレよりパムーンと行きたいとでも言うのか?」
意地悪くにやりと笑うと、
ラピルは少し口角を上げた。
上手く表情に出せない彼女の、“嬉しさ”。
「ううん、ゼオンと行きたい。」