Long

□Last Waltz
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彼について、Lが知っているのは彼が名前と言う名前だということ、Lより少し年下だということ、ワイミーズ代表という立場ということ、それだけだった……はずだった。
彼の事を話すワタリを見ている内に、Lはどこか彼に興味を持ち始めていたことに自分で驚いた。

他人。ましてや、顔すら見た事のない相手に興味を持つなんて。

Lは自分で自分の事を理解出来ないまま、ワタリに告げてみた、するとワタリは、今まで見たことの無いくらい目を丸くして驚いて、次の瞬間には本当に嬉しそうに笑った。

ワイミーズからかかってきた電話に、Lが出てみた事もあった。もちろん、Lとしてではなく、そこで働く職員としてだったが。


「……はい」

《あ、あれ?本部にかけちゃいましたか。名前と申します》

「いえ、ワタリの電話ですよ」


Lがワタリ専用の電話に出ると、男性にしては少し高めな、しかし落ち着きのある性格である事が分かる心地よい声が流れ込んでくる。
ワタリ専用の電話だというのに、ワタリ以外の人物が出た事に驚きを隠せず、アワアワと電話の向こうで言っている彼は、きっと隠し事など出来ない正直な性格なのだとLは人知れず2ミリ口端をあげた。


《え?……あれ?》

「ワタリは今Lといらっしゃいますので、代わりに私がとらせていただきました」

《ああ、そうでしたか!すみません》


こちらが名乗ってもいないのに、彼は電話口の相手を信じるのか。
これは頂けない、Lはピクリと眉をひそめる。


「いえ」

《ではワタリに"無事送りました"とお伝え下さい》

「はい、では」

《あ》

「……なにか」


電話を切ろうとして離した受話器から彼の何か言いたげな声が漏れた。


《あ、あの……え、Lさんは……お元気でしょうか》


彼に名前を呼ばれた瞬間、心臓がトクリと跳ねたのを感じた。不整脈か?長年の偏食が今になって?

何故、どうして、数々の難事件を解いてきたLにも解決出来ない疑問が腹の奥底に渦巻いている。


「……ええ、元気です」


それは紛れもなく、Lからの返事だった。

《そうですか、……では…失礼します》

「はい」


ツーツーと音を立て続ける受話器を眺めて、彼の声を思い出しているLを心配したワタリが甘いケーキを焼いたのは、また別のはなし。

さて、問題はここからである。
そもそも何故Lが彼の事を思い出していたのか。確かに、ワタリの死をワイミーズに伝えたということは、名前にメールを送ったと言っても過言ではない筈だ。過言だとしても、今のLには自分の考えている言葉の破綻すら気づけないほど驚いた。


《ごめんくださーい》


壁に取り付けられた画面にはヘラリと浮かべられた笑顔のどアップ。
その声は、まさしく何度も頭の中で再生していた、あの涼やかな声だった。




なぜ彼がここにいる?



Lは元々見開いた様な目を更に開いて、インターホンの受話器を取った。しかし混乱は続いている。


「はい竜崎です」


受話器に向かって名乗る程には。




*興味*

*……*……*
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