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□であい編
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「えっ……マジでいないのか?」
そう名前が呆然と問い掛けると、子供達は呑気に「まじまじー!」と犬と戯れていた。
……可愛いなおい。ってそうじゃなくて、どーすんのこいつ!だってゴールデンじゃん!普通の野良犬とは訳が違うだろ。こーゆーのって血統書とか有るんじゃなかったか?
心中でそんな事を思っていると
「うわっ……」
さっきまでのお天気はどこへやら、空模様は曇天へと表情をかえ、大粒の雨が。
「雨だ!」
「俺帰る!」「私もー!」
誰かが言ったその一言に、子供達は蜘蛛の子を散らす様に帰って行った。
つまりは残ったのは名前と例の犬っころ。
……これはあれか、丸投げってヤツか!
「……。」
「……。」
「………。」
「しょうがない……一緒に帰るかー」
「わふっ…」
隣りに来ていた犬っころを見ると、首には誰かが付けていったのか、真っ赤なリボンが……こう…がんじ絡めに……うん、直して上げるからそんな目で見なさんな。
名前が犬っころのリボンを直してやろうと首で一度結んだは良いが……あれ、リボン結びってどうだっけ?…こうだっけ?
色々試行錯誤している間に先程の二の舞になりそうだったので諦めた。
首の後ろで、一度だけ結ばれたリボンの端が、歩く度タラリとゆれて、それがまるで某ゲームの真っ赤な熱いヤツを彷彿とさせ……
「真田幸村推して参る!ってか?」
尻尾を降りながら雨の中颯爽と歩く姿に言ってみれば、嬉しそうに名前の回りをグルッと回ってみせた。
「嬉しいのか?そうかそうか…お前は賢いなあ!…じゃそうだなぁお前虎次郎な!」
虎次郎はシュンと尻尾を垂らして名前の隣りを歩いた。
「お――…なっ」
「――よ!」
「ギャッ…」
雨脚はどんどん強くなり、ちょっと雨宿りしようかと公園に差し掛かった所で、複数の声と何か動物の鳴き声が聞こえた。
「……なんだ?」
近づくに連れて会話が良く聞こえて来た。
「気持ち悪い目でこっちみんなよ!」
「どうせ野良だろ、やっちまおうぜ」
なにを…してるんだあいつらは……
公園の奥、木の影で中学生ぐらいの男二人が黒い塊に向かって小石を投げていた。
名前が更に近付くと、それは黒い猫だと言うのが分かった。
「おらっ!」
ガツッ…と言う音と共に猫が揺れる。
それに気を良くしたように少年達は次々と小石を投げた。
……そいつが何したって言うんだよ。
「……テメェら何してんだ!」
「うぁやっべ…行こうぜっ」
「んだよ…」
思いの他あっさりと逃げて行った奴等に内心ほっとした。向かって来られても立ち向かえる程喧嘩なんてした事無いし。
「クゥーン…」
虎次郎の声に我に帰り、猫へと近付いた。
「大丈夫か……?!」
その猫は、傷だらけの体で俺を威嚇していた。
彼の名前と黒い悲しみ。