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□アーウィンとお勉強
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アーウィンとお勉強中


「ここが違う!」

 部屋の中にアーウィンの声が響き渡る。

「それと、ここも違いますね。こっちも違う。……ふぅ、貴女は私の話しをちゃんと聞いていたのですか?」

「……ううっ……うぅぅ〜……」

 私はアーウィンの溜め息混じりの言葉を耳にしながら、唸り声を漏らして頭を抱える。

 ……そう、ただいま私は、お勉強中。

 身体があまり丈夫でなく学校にも満足に通えない私は、一日のほとんどをベッドの上で過ごしているのだけど、調子の良い時は勉強机に向かい、アーウィンから色々と教えてもらっている。

 そんな私の目の前にある机の上には数冊の本と、様々な文字や記号や数字が記された一枚の紙。

 ……先程からアーウィンに教えられて、この紙に書かれた問題を解くために悪戦苦闘しているのだけど……正直言ってさっぱりわからない……私って馬鹿なのかしら……。

「やれやれ、こんな問題も解けないようでは復学した時が思いやられますね。リズやマシューに笑われますよ?」

「……っ! そんな……そんなの、ヤダ……」

 問題を解けない悔しさで、思わず涙がにじむ。

「……それではもう少し頑張りましょう。大丈夫、よく考えればきっとわかるようになります」

 アーウィンは私の頭をぽんぽんと軽く叩きながら、励ましの言葉を掛けてくれた。

「……うん、私、頑張る! アーウィン! もう一度最初から教えて!」

 私は手の甲で目元に溜まった涙を拭い取ると、気合いをいれる為に両手で頬をパシンと軽く叩いた。

「その意気です。では、こちらの例題を元に最初から順を追って説明します。これはですね…………」



 そして、小一時間後──



 部屋の中には勉強机に突っ伏す私と、それを呆れ顔で見つめるアーウィンの姿があった。

 ……結局、全然わからなかった……ううっ……みんな、本当にこんな難しいのをやってるんだろうか……。

「やれやれ、仕方が無いですね。……そろそろ私は夕食の用意をしなければならないので、今日はこの位にしましょうか」

「………………うん」

 私は机に突っ伏したまま、なんとかそれだけを口にする。

「では、ベッドに戻ってて下さい。……大丈夫ですか? 手を貸しましょうか?」

「…………大丈夫」

 私はむくりと顔を上げ、力無くそう返事をすると、ノロノロとベッドに向かい、頭から布団を被って横になった。

「それでは、夕食が出来たら持って来ますから」

 バタン。

 アーウィンはそう言い残して部屋を出て行った。

 ……悔しい。あまりの悔しさに涙が零れる。どうして、あんな問題が解けないのだろうか。他のみんなは出来ている事なのに……。

 ……大丈夫。大丈夫よレナ。しっかりしなさい。あなたもうすぐ14歳になるんでしょう? 大丈夫。明日には絶対にあの問題を解いてやるんだから……私、負けないんだから!

 ──そうやって枕を濡らしながらも、自らを奮い立たせていたレナであったが、随分と脳を酷使した所為か、ベッドで横になった途端に猛烈な睡魔に襲われ、まどろみの中へとその身を委ねるのであった──
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