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□銀の少年、金の少女。
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央魔の血液は美味しいと言う事らしいが、唾液も同様なのであろうか。それとも、レナだから甘いと感じるのだろうか。
それはどうなのかわからないが、相変わらず反応は見られない。
(これは、アレかな? ……舌とか入れてみた方が良いのかな?)
そのように考えたフレディは、口づけを交わしつつ舌で唇をこじ開けようとした、その刹那──
頭頂部に衝撃を感じた。
「うわっ!? 痛っ!」
慌てて頭を抑えて顔を上げると、若干涙目になって頬を真っ赤に染めたレナが、その華奢な腕を振り上げて、フレディの頭に向け振り下ろそうとしている姿が目に入った。
「ふふ、ふ、フレディの、ば、ばかぁ〜! い、いきなり何するのよ〜!!」
「うわわっ、ご、ごめんよ、ねえちゃん〜!」
どうやらレナは何が起きたのか分かっていなかったようだ。……なんか色々やっちゃって、ごめん。
フレディは頭を抑えつつ、ポカポカと言う擬音の出そうな、レナの攻撃をその身に受けながら心の中でも謝った。
それからややあって──
レナが落ち着いて来た頃合いを見計らって、フレディは声を掛けた。
「ねえちゃん、ごめん!」
「も、もう……いきなりなんて、やめてよね……」
レナは頬を仄かに赤らめて、はにかみながら、蚊の鳴くような小さな声で呟いた。
「ほんとごめんって!」
「べ、べつに、い、嫌じゃなかったから……いいよ……」
「本当?」
「も、もう……今度はちゃんと言ってからにしてよね……」
(ん? 今度?)
「ねえちゃん、それって……」
「もう! い、言わせないでよ! ……あ、アーウィンに用があるから、わ、私もう行くね」
レナは素早く立ち上がると、赤く染まった顔を、手に持った本で隠すように覆いながら走り去っていった。
……わかったよ、ねえちゃん。また今度、ね。
フレディはレナの走り去った方向を眺めながら、薄く微笑んだ──
フレディらのいた場所から少し離れた木陰に、その双眸を紅に染めた男が、二人の様子を見つめていた。
その手には、一眼レフのカメラが握られていた──
※ ※ ※
後日、"村"の広場にフレディとレナがキスしているところの写真が張り出され。二人が住人らに散々冷やかされて赤面しているところを、アーウィンがニヤニヤしながら眺めていたとか、いなかったとか……。
END