*なんでやねん*

□第11話
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全く、散々な目にあった…。
すっかり暗くなった空を見上げる。
どの部活動も終了したのか、残っている生徒はほとんどいない

テニス部から解放されて、急いで日誌を書き上げ職員室に持っていけばまだ担任が残っていて…

「別に明日の朝でも良かったんに」

「○○は真面目やなぁ」と言われた。
これほど担任に殺意を抱いたことはない。そもそも全てお前のせいなのに…っ!

思い出しただけでも腹が立ってきた。
もう考えるのはやめよう。

ふぅっと苛立ちを消すために息を深く吐けば、パコーンパコーンと音が聞こえてきた。思わず足を止めてしまった。

…テニスコートの方からだ。
こんな暗い中まだやっているのだろうか。
一歩、二歩とテニスコートに近づく。
声はしない、パコーンとボールを打つ音が一つ聞こえるだけである。

…少し、少し覗くだけだ。
見つからないように、ゆっくりと近づきフェンスの前まで来た。
テニスコートの中はいくつもの照明で照らされていて明るい

そして、コートには一人…白石さんがいた。
サーブの練習をしているのか、懸命にボールを打っている
その額には汗が滴っていて、白石さんの色気を醸し出している

…中学生で色気ってなんやねん。
でも本当に色気を感じるのだからしょうがない。
見ているだけなら本当にイケメンなんだよなぁ…。

そんなことを思いながら白石さんを見つめていれば、不意に左腕に巻かれた包帯で汗を拭いた。

ドキッと心臓が高く鳴った。

ジャリ…

『ーッ!』

その姿に不覚にもドキリとしてしまい、足元にあった石に気づかず踏んでしまった。
途端に、ジャリっと音を立てる。
普段なら気にならない小さな音だが、この静けさの中ではとても大きく響き渡る

「○○さん……?」

聞こえてきたのは、紛れもない白石さんの声。
…あぁ、私のばか。

『…お疲れさまです。』

気づかれてしまっては仕方がない。
足元に向けていた視線をあげ、フェンス越し、コートの中の白石さんを見る。そうすれば、パチリと目が合う。

「…もしかして、今まで日誌書いとったん?」

そう言いながらこちらに歩み寄ってくる。

『え、えぇ…まぁ…。』

先程ドキリとしてしまった手前、近づいてくる白石さんを見れない

視線を彷徨わせていれば、カシャンとフェンスが鳴った。


*

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