*なんでやねん*

□第19話
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約束の期限が明日に迫った日の朝。

「おはようさん。ねぇ聞いた?あの一年生テニス部のマネージャーやめたらしいで!」

教室に入ってきた途端、大スクープ!といった感じで、テンション高めにそんな報告をしてくれた友人に、『おはよう』と挨拶をする。

『…みたいだね。』

「なんや知っとったんかー」と残念そうに友人は自分の席に行った。
そりゃ知ってるに決まってる。何たってその話題はあっちこっちで話されているからな。

「結局三人ともやめてしもうたな〜。」
「相当キツいらしいで、マネージャー。」
「また募集するやろか?」

などなど…内容は様々だが、話題はどれもテニス部マネージャーについてである。

「そんなに大変なんやろか、マネージャーって。」

自分の席に行ったはずの友人が荷物を置いて私の所へ来た
そして遠慮なく前の席に座る。
まぁ、私の前の席の住人はいつも遅刻ギリギリだからな。

『さぁ…、でもテニス部だしね』
「あー、せやな。全国優勝目指しとる部活やもんなー。そりゃキツいかー。」

そう言いながら、「ふぁ…」と欠伸をした友人は見るからに寝不足気味だ。

「まぁ、見てるんが一番ちゅーことやな」

激しく同意である。
…だがな友人よ、私はそういうわけにもいかないんだ
私だってできることなら傍観を決め込みたいよ…。

まぁ、そんなことを今更言ってもどうしようもない。
『はぁ…』とついたため息はチャイムの音で掻き消された

「あ、じゃあね」
『うん』

チャイムの音を聞いて自分の席に戻っていた友人を目で追う
それから前の席に視線を移せば、空席のままだった。
…ついに、遅刻したか。ドンマイ。

心の中でそう呟いたのと同時に、「おはよーさん」と担任が教室に入ってきた。

「起立、礼!」

「おはようございまーす」と挨拶をして席につく。朝のHRの始まりである。

「えーと…お?そこの席空いとるな」

そう言って指さしたのは私の前の席である。
「なんや、とうとう遅刻か?」と言った担任に、教室から小さく笑いが起こった。
どこの世界も、学校の始まりというのはそんなに変わらないらしい。

「今日の予定やけどー、」

そうして朝の連絡をしていく担任をボーと見つめる。
前世でも同じ様なことしてなーと感傷に浸っていれば、「ほな、今日も一日頑張ろな!」という声が聞こえた。
これは、ウチの担任が朝のHRのシメで必ず言う言葉である

…あぁ、平凡な日常だ。いつもと何も変わらない。
何か違うと強いて言うなら、前の席が空席なことくらいだ
それ以外は何ら変わらないのになぁ…。
そんなことを考えながら一時間目の準備をする。
あ、待って。一時間目ってもしかして…

キーンコーン カーンコーン

「おはよーさん、ほな授業始めるでー」

あっという間に授業開始の合図が鳴り、教室に入ってきたのは渡辺先生である。

うわ、と思った瞬間渡辺先生と目が合った

「号令かけてやー」

そう言って、ニヤリと口元が歪んだのを私はハッキリと見た。


*

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