long story


□名も無き娘
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「航海士に聞いたら次の島まで
まだ何日もかかるって言ってたわ。」

ローズさんの言葉に
僅かでも安堵した自分がいた。

迷惑かけたくない、だなんて
最もらしい事言ったけど
本当は…違う。

1週間後?1ヶ月先?1年?3年?

いつか記憶が戻って、
一緒に居られなくなる事が怖かった。

いずれ別れが待ってるのなら、
始めから馴れ合わない方が良い。

そんな私の身勝手なのに。

出された軽めの夕食に口を付けながら
私の頭の中では白ひげさんの言葉が回る。


"娘"



「じゃ今日はまだ安静にしててね?」

「あ…ごちそうさまでした。
とっても美味しかったです。」

私はさっきのベッド、医務室だったのだけれど、に寝転がった。

「そ?良かった、コックが喜ぶわ。
明日からは何処か部屋を探しておくわね?」

「そんなすみません、私ここで十分です。」

「ふふ、元気な人は医務室に相応しくないわ。」

仲間になる事、断ったのに。

ローズさんは相変わらず優しくて。

「ね、呼ぶ時とっても不便よね。
名前があった方が良いわ。
そうね…明日あなたが起きるまでに
私が素敵な名前、考えといてあげちゃう。」

「あ…ありがとうございます。」

「ふふふ、楽しみにね?
じゃあ…おやすみなさい。」



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