long story


□波の水音
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「おいっ!!」

きっと、はた目にはそう見えたのだろう。

私は腕を後ろに引っ張られて我に返った。

「ひゃっ…!」

「お前何してんだ!?」

「え…あの、すみません!
勝手に歩き回ってごめんなさい!
目が覚めてしまったので
潮風にあたりたいと思って…。」

出歩いた事を咎められたと思って
勢い良く頭を下げた。

「…なんだ、びっくりしたぜ?
てっきり記憶失って悲観したのかと…。」

「へ…?あ!すみません。
そうゆうんじゃないんです。
紛らわしい事して申し訳ありません。」

「いや、おれも悪かった。
いきなり掴んじまって…。」

「いえ…大丈夫です。」

「おれエース、ポートガス・D・エース。」

「えと……火拳のエース…さん?」

「そう!よく知ってんなあ!」

「自分でも…どうしてか
分からないんですけど、色々詳しくて……
可笑しな話ですよね。
自分の事は何も分からないのに。」

「まあ、記憶喪失ってのは
結構複雑なもんらしいからな…。
大変だろうけど、とりあえず
元気そうで良かったぜ。」

「はい、おかげさまで。
ありがとうございます。」

「よし!…じゃ、そろそろ戻んな。
医務室だろ?道分かるか?」

大丈夫です、と答えて
私はもう一度ペコリと会釈して別れた。

ベッドに戻ってから思い出した。

エースさんと話してたら
すっかり忘れてたけど、私あの時
何故か波が凄く気になって
欄から下を覗き込んでたんだった。

なんで…どうしてかしら。

珍しい、とは違う。

どっちかって言うと真逆、懐かしい感じで。

私のよく知っているものみたいに。

考えてるうちに私は、眠りに落ちた。



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