long story


□それは嵌められた象徴
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言葉を選んでいるのか
それとも頭の中を整理しながらなのか
慎重に、ゆっくりと話しを続ける。

「……この…能力で…
マリンフォードの街で起きた火事だとか、
戦闘で燃えた本部の軍艦…だとか…
色々なものを消火していました。」

「私は…海軍の兵ではありません。
…でもそうするしか、
そうするしか私には思いつかなかった。
捕虜だった私には家族がいません、
帰る場所も無かったのです。
始めは…役に立てたら、と
そんな気持ちでした。」

「でも本部で…海賊船を目にして…
無我夢中で破壊したあの時、
能力の制御が効かなくなってた…と
そう判断した海軍は直ぐに
海楼石の使用を決定しました。」

「そうまでして海軍は、私に
消火という仕事を与え続けました。
それ以来、これを外して貰えるのは
少将以上の許可と監視付きで
言われた仕事をする時だけに…。
海賊から保護してくださったと、
一度は恩さえ感じていた海軍も
私を自由には、してくれなかった。
やっぱり私は、…道具でしかなかったんです。」

「…だから「シャロン、」

おれは殆ど無意識に名前を呼んでしまった。

余りに辛そうな顔で話しをする
こいつにこれ以上、
続けさせたくなかったからかもしれない。

「……はい。」

顔を上げたシャロンに
無理するな、と繰り返した。

手を伸ばしその華奢な体を
軽く抱き上げて自分の膝に乗せる。

「お…父さん…?」

シャロンの瞳には不安の色が覗いていた。

そんな顔させたいんじゃねぇんだがな…。



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