long story


□その少女は今ここに
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「聞き役に徹するつもりだったが……、」

「……?」

少し表情の険しいお父さんに、戸惑った。

何か言われる…?

意思の無い奴だと呆れられた?

自虐的な想像なら幾らでも出来てしまうから
不安は募る一方で。

だけど、

「…そんな顔させたいんじゃねぇんだがな。」

「…!」

……此処へ来てから何度目だろう。

いつもそうだった。

世界中で恐れられている白ひげ、彼が
こんなにも優しいだなんて
この世の中でどれだけの人間が
知っているだろう。

お父さんは膝に乗せたままの私に問い掛ける。

「…ジンベエを、知ってるか?」

「……七武海、の…?」

唐突な質問にこくりと小さく頷けば
お父さんは同じく頷いて続けた。

「あいつとは古い付き合いでな。」

「……!」

驚いた。

海賊嫌いで通っているジンベエと
事もあろうか、四皇白ひげが。

「……以前、あいつから聞いた事があった。
本部で囲われてる身元不明のガキの話だ。」

「!!!」

それはきっと。

「お前の事を酷く心配してた。」

「…そんな…私…。」

私はふと、恐ろしい形相の魚人海賊が
たった一度だけ見せた優しい目を思い出した。

ほんの一瞬、視線を感じ振り返り捕えた表情。

私を通り越したその先の誰かに
注がれたのだろう、と
当然の様に思い込んでいたから。

まさかその慈愛に満ちた柔らかな眼差しが
自分に向けられていたものだったなんて。



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