long story


□その少女は今ここに
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「…いつ…いつから、
いつからそれが私だと気付いて…」

震え始めた声を出来るだけ落ち着かせながら
ゆっくりと私は問い掛けた。

答えを待つ間、ただ握った手に力を込めて。

お父さんは思い出す様に少しだけ
視線を宙に浮かせて私の問いかけに答えた。

「海楼石…ありゃあ誰でも
手に入れられるもんじゃねぇ。
政府か軍か…どちらにせよ
初めは確信を持てなかった。」

視線を戻したお父さんは
真っ直ぐに私を見据える。

「だが、お前が甲板で雨に打たれてたあの時、
おれの中でジンベエの話とお前の行動が繋がった。」


"お前を引き付けてるのは、水…か?"


あの時のお父さんの言葉、
それは私自身の記憶が戻るよりも前。

全て知った上で私を娘にと
そう、言っていたことになる。

どうして…

安定しかけていた私の心が再び
その均衡を崩し始めた。

読めない意図は私に恐怖しか与えない。



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