long story


□本当に怖れるもの
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ふと、自分が膝の上に座っている事に気付く。

降りようと身動いた私の、手を、
この男は掴んで離さなかった。

「言った筈だ、お前が何者で在ろうと
ましてや過去なんざ関係ないと。
同情なんかで親子にゃなれねぇんだよ…!!」

囚われた私の瞳は視線を外すことを許されず
お父さんのそれを直視するしかなかった。

「…シャロン、おれは離したりしねぇ。」

「!!!」

その大きな手でしっかりと掴まれた私の腕。

私が何より不安に思っていた事を、
口にはしない私の中に燻る恐怖を、
この人はピタリと当ててしまった。

私の中のソレが利用される恐怖、
それだけじゃなかった事を。

道具の様に利用される事に必ず伴う恐怖。


"モウイラナイ"


幾ら手を伸ばしても
懸命に掴もうと努力しても
どんなにしがみ付いても
私の手は振り払われ空を斬ってきた。

私の、怖れるものそのもの。

この人は…私の意識の奥深くから
積み上げられてきた根本を
僅か数日間で…?

私はじわじわと溢れ
零れ落ちそうになる涙を
お父さんに視線を合わせたままの
上向き加減を保つ事で必死で堪えた。



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