long story


□不安要素は
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すうっ、と息を吸い込めば、渇いた口の中に
ひんやりとした空気が取り込まれる。

「………青キジ、…です。」

私は遂に、あの男の名前を口にした。

「…!」

「少将以上の監視とは言っても殆どあの男に…
そう、クザン、あの男に一任されていました。
そして私が逃げたあの日も。
…おかしいんです、いつもなら
船内でも自由には動き回れないのに
あの日は、……違った…。」

あの男が何を考えているのか
私には分からなかった。

気まぐれな大将の悪戯?

まさか…到底、そうは思えない。

ありのままの存在を受け入れてくれた彼に
ありのままを話した事が正しかったのか
私には判断がつかなかったけれど。

それでも、そんな私をも
受け入れてくれるかもしれない、
そんな期待にも近い希望に託して告げた
私の言葉に、この男は
殆ど無表情を保っていた。

私はじっと答えを待つ。

もう…、使い捨ては嫌なの。

…だから。



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