long story


□空はやがて
2ページ/2ページ




「シャロン。」

おれの声にシャロンが
俯いていた顔をつ、と上げる。

こちらを見上げる表情は曇っていた。

さて…、
その曇った顔はもう必要ねぇ。

「シャロン。」

おれはもう一度、ゆっくり少女の名を呼んだ。

「…?」

「いいか、シャロン。
あの野郎の考えてる事ぁ分からねぇ…
意図的な行動か、否か。だが、どちらにせよ、
お前がおれの娘である以上
大将だろうが政府だろうが何であれ
手を出す事は決して許されねぇ。

なあ、シャロン。
お前はもう、何ひとつ
不安に思う必要は無いんだ。」

「…!!」

瞬間、驚いた様にその大きな瞳を
見開いたシャロン。

それまで曇り空だった表情が
瞬く間に雨空に変わり、
ボロボロと大粒の涙を流した。

「おいおい…、そんなに泣くんじゃねぇよ。
おれはお前の涙なんざ見たく無ぇんだ。」

「………………ごめんなさい。
……でも、…………嬉しくて…つい…。」

細い指先で器用に涙の雫を掬い取ると
シャロンはスン、と軽く鼻から空気を通した。

そして

雨空だったその表情は
ちょうど太陽が雲の隙間から光を溢れさせる様に
≪ふわり≫と泣き笑いの笑顔を覗かせた。



----ありがとう。

そんな言葉で言い表すのは
勿体ないほど強い感謝の気持ちが
シャロンの中に溢れ出してやまなかった。



〈どんなに暗い嵐の夜でも空にはやがて
…暖かな日差しに包まれる朝が来るのだから〉




END .
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ