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□転向
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「その人を放しなさい。」
全てはこの一言から始まった。
引き金は自分で引いたの。
目の前には若い女に手を掛けた男が居て。
少し離れた位置には老人に抱きかかえられ
泣いて母を呼び、もがく幼子。
その男は高額賞金首だった。
勝てない、そんな事は分かっていたのに。
だけど私はその子に
遥か昔の自分を重ねてしまった。
殆ど衝動的に、無謀にも。
「なんだ、身代わりにでもなろうってか?」
違う。
「身代わり?そんなのごめんだわ。
私はただ、…あなたを殺すだけ。」
「…お前…賞金稼ぎだな?
舐めた口ききやがって…!!」
男は女から手を離し、私の方へ興味が移る。
女はフラフラと男から離れて行った。
そう、それで良い。
神様なんて信じちゃいないけど
もしかしたら私に、いい加減にしなさいって
言ってるのかもしれない。
復讐など無意味。
此処で死んで終わりにしなさいって、ね。
私は向かって来る男を相手にすべく身構えた。
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