鏡の中の黄昏蝶1話〜27話

□鏡の中の黄昏蝶2
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これから日が落ちると効率も悪くなるだろう。
明日はこの辺りを重点的に捜索して、今日はこれくらいで切り上げたほうがよさそうだ。



「……わたし……警察に……」

このみは呟くように言った。
どうやらこれから警察署にでも行くつもりらしい。

「警察って言ってもお前、どう説明するつもりだよ?」


旅行者でもない、留学生でもない。
正式な手続きを経て入国していないのだから、不審に思われるに違いない。
捕まる可能性も十分あるだろう。というかその可能性が高い。


「……まあお前がそうしたいなら、止めないけど」



ダンテが警察を当てにしなかったのは、このみの関わる事件がおそらく魔界とか悪魔絡みで、
警察などが介入して解決する事件ではないと最初から思っていたからだ。
魔力の痕跡のあった蝶の死骸が落ちていたことからも、このみが悪魔に関わるなんらかの事件に巻き込まれたことは間違いないだろう。


しかしこのみがダンテと同じように考えているとは限らない。
そもそも悪魔の存在を知らなかったのだ。
そんな状況下で、見知らぬ自分に延々とついてまわって得体の知れない鏡を探すより、
警察を頼るほうがよほどまともな選択であると言えるかもしれない。


考えれば日本へ帰る方法は何も一つとは限らないのだ。
密航したわけではないから、彼女に後ろ暗いところは何一つない。
極論を言えば、人類初のテレポーターとして世間に公表して、日本に凱旋帰国したっていい。
現在の時刻は午後5時。このみがやってきて14時間経過している。
どう見ても普通の日本人学生が、14時間で日本からこの地へやって来れるわけがないのだ。



とりあえず、近くの大通りまでは案内してやる。
テメンニグル出現以降の騒ぎでパトロールが増えているから、適当にその辺に立たせておけばいずれパトカーを捕まえることができるだろう。


辺りはすっかり日が落ちて、薄暗い。人通りも既にまばらだ。
そんな状況で一人女の子が立っていたら、警官も声をかけるに違いない。


「じゃ、俺は帰る」

くるりと背を向けて、ダンテはもと来た道を帰ろうとする。
さすがにダンテも警察と係わり合いになるのはごめんである。
警察に任せておけば、どういう形であれ、身柄の確保はしてくれるだろう。



そう思ったのだが。



「…………」


このみの心細そうな視線を痛いほどに感じる。
ダンテを呼びとめはしないから、今日一日付き合わせたことで、彼女なりに遠慮をしているのだろう。



……そもそもあのこのみの拙い英語力でうまく説明できるのだろうか。
もしもからかっていると思われて追い返されたら、今夜こそ悪魔の餌食になるのではないか。



「…………………」

ダンテは深いためいきをついた。
自分はやはりお人よしだ。



ダンテはこのみの方を振り返ると、彼女のほうへ歩き出す。
驚いて見上げてくる彼女の顔をまともに見られずに、明かりの灯りはじめた街灯を睨んだ。



……ああ、もう、どうにでもなれ。





***あとがき***

DMCの舞台って、そういえばどこなんだろう。
悪魔とか出てくるから実在しないところなんだろうが、なんとなく雰囲気はアメリカっぽい……?


そんなノリで今回の話を書きました。
DMC1の攻略本には、アメリカの記述があるんでしたっけ?
未確認なので、その辺は曖昧です……。
そういうわけで、アメリカっぽい舞台なので、一応時差もアメリカ首都ワシントン辺りに合わせています。(時差だけで街の雰囲気とか完全個人の妄想)


ただ、あくまでこれはファンタジーだから!!!私の創作設定だから!!!
なので、日本以外の地名はなるべく出さない方向でいきたいと思います。



あと、交番制度って日本固有のものなんですね。
アメリカだと車でパトロールが主流みたいです。知らずに書いて慌てて直しました。
そういやアメリカ映画とかでもそんな感じだったな。


ところで大学受験レベルの高校生の英語力ってどのくらい?
個人差も大きいですし、読み書きができても、話すのは難しいですよね。
私は人生で2回ほど、英語で道を尋ねられたことがありますが、
2回ともテンパッて英語を喋るどころではありませんでした……。


そう考えると、ヒロインは片言でも意思疎通しようとしてるあたり、すごいなーと思ったり。
文章で見ると簡単なのに、聞き取りとなると途端に難しくなったりもしますよね。

個人的には、すぐに話ができるようになるより、言葉が伝わらない状態から始まるシチュエーションに萌えます。
自分だったらこんな状況、絶対嫌だけど!(笑)
なので、ヒロインにはいましばらく苦労してもらいたいと思います。

ダンテがいるならきっと大丈夫……と思いたいけど、3のダンテはわざと変な言葉教えたりしそうだなぁ。
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